自動車の創生期
自動車「ヴォワチュレット」を運転するルノー Louis Renault
1899年の今日、"automobile"(自動車)という単語が、ニューヨークタイムズ紙の広告で初めて使用されました。これだけ普及していても自動車の歴史はまだわずか百年しかないのです。
最初の自動車とされているのは、フランス陸軍の技術大尉キュニョーが1769年に製作した蒸気自動車でしょう。時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突して大破してしまいました。蒸気機関で動いた最初の乗り物は、蒸気機関車や蒸気船ではなく、蒸気自動車でした。
キュニョーの失敗にも関わらず、イギリスでは1827年ごろから定期バスとして都市部や都市間で広く用いられるようになりました。1900年ごろにはアメリカ合衆国で、石炭の代わりに石油を使った蒸気自動車が作られ、普及していきました。この頃は街では電気自動車が静かで性能もよく最も用いられており、次いで蒸気自動車でした。ガソリン自動車はうるさく、また運転が困難だったようです。アメリカ合衆国では、1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていました。
1876年にドイツのオットーがガソリンエンジンを発明しました。ダイムラーはこれを改良して、二輪車や馬車に取り付け、走行試験をおこないました。また、1885年にドイツのベンツは、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくりました。ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの二人であると考えられています。
初期の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族や大金持ちだけが所有できるものでした。1907年に、フォードが「フォード・T型」を発売しました。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し、自動車の価格を引き下げることに成功しました。これによって裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となりました。自動車が大衆に広く普及し、生活必需品化することを「モータリゼーション」といいます。日本では1964年の東京オリンピックの直後からモータリゼーションが進んでいきました。
自動車の普及と同時に交通事故による死亡者数は増加し、年間1万人以上が死亡する事態となりました。当時、戦争でもないのに膨大な人数が犠牲となることを「交通戦争」と表現していました。特に1970年は年間に1万6765人が死亡する史上最悪の年となりました。当時の犠牲者の多くは歩行者であり、特に幼児が半数以上を占めていました。昨年は5743人と減少しましたが、お年寄りが犠牲となるケースが多くなっています。また、負傷者に至っては年間100万人を超えていることを考えると、まだまだ改善の余地がある道具であると言えそうです。A.M.