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年末年始の風景④

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 諸説ありますが、一般的に今夜見る夢を「初夢」といいます。室町時代ごろから、吉夢(良い夢)を見るには、七福神の乗った宝船の絵に「永き世の遠の眠りの皆目覚め 波乗り船の音の良きかな」という回文の歌を書いたものを枕の下に入れて眠ると良いとされています。これでも悪い夢を見た時は、翌朝、宝船の絵を川に流して縁起直しをします。初夢に見ると縁起が良いものを表すことわざが「一富士、二鷹、三茄子」なのは有名ですね。「四扇、五多波姑、六座頭」と続くそうです。

 ところで、「七福神」とはどんな神さまが知っていますか。福をもたらすとされる「恵比寿」「大黒天」「毘沙門天」「弁才天」「福禄寿」「寿老人」「布袋」の七柱の神さまを指すのが一般的です。ただし、この組合せになったのは近年のことで、「吉祥天」や「猩猩」,「稲荷神」,「福助」などが含まれた時代もあるようです。
 「恵比寿」は異邦より村に時たま訪れる外来の神「夷」であり、海の向こうからやってくる水の神だったものが蛭子命や事代主神と混同され、釣竿を持って鯛を釣っている姿で表されるようになったものです。「大黒天」は仏教の守護神の一人で、元々はヒンドゥー教のシヴァの憤怒の化身だったものが、大国主と混同され、米俵に乗り福袋と打出の小槌を持った微笑の長者形で表されるようになったといわれます。「弁才天」も仏教の守護神の一人で、元々はヒンドゥー教の女神サラスヴァティーです。「毘沙門天」は持国天・増長天・広目天と共に四天王の一尊に数えられる仏教の武神ですね。「福禄寿」は道教で強く希求される3種の願い(幸福・封禄・長寿)の三徳を具現化したもので、福星・禄星・寿星の三星をそれぞれ神格化した、三体一組の神だそうです。このうち、寿星は南極老人星(カノープス)とされ、禿げた長大な頭に白ひげをたくわえた老人で表されます。この寿星が単独で日本に伝わったのが「寿老人」です。「布袋」は中国唐末の明州(浙江省)に実在したとされる異形の僧「釈契此」に由来し、大きな袋を背負った太鼓腹の僧侶の姿で描かれます。
 「七福神」は神仏習合からなる、いかにも日本的な信仰対象であるといえるでしょう。年末にも書きましたが、由来にこだわらずに外から来たものを取り込んで融合することが、この国の特徴です。「七福神」の中で日本古来の神は「恵比寿」だけ。しかも、異邦からの客神(まろうどがみ)なのです。閉鎖的と言われグローバリズムが叫ばれて久しいですが、そうでもないのではないでしょうか。

 今夜「こばと」のように世界にはばたくような素敵な初夢を見てください。