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最先端実験科学教室を体験して 感想①

 先月21日にサントリー生命科学財団 生物有機科学研究所でおこなわれた最先端実験科学教室に参加した生徒の感想がまとまりましたので,55期生のものを抜き出して数回に分けて紹介します。貴重な体験ができただけではなく,進路実現に向けて大きな励みになったようです。

 今回、サントリー生命科学財団生物有機科学研究所で最先端の実験を体験できると知り、大変興味を持ち、参加を希望しました。もともと生物が大好きで分子生物学にも関心があったので、ぜひ参加してみようと思いました。
 研究所では、ホルモン研究の際にホヤを用いると聞きました。ホヤという名前は聞いたことがありましたが、いったいどのような生物なのか全くわかりませんでした。ホヤは脊索を有する原索動物で、人間の先祖に近い生物であることも初めて知りました。実際、研究に使っていらっしゃるカタユウレイボヤを触らせてもらうことができ、大変貴重な経験になりました。
 PCRによるGnRHの受容体mRNAの増幅と電気泳動で卵巣にこの受容体が存在することを確認する実験では、ラダーマーカーおよびPCR溶液を流動用色素とパラフィルム上で混合し、アガロースゲルに移すという操作が思っていた以上に難しかったです。けれども、マイクロピペットはミスなく順調に操作できたので、嬉しかったです。100Vで15分電気泳動させた後、紫外線照射装置で紫外線を照射したときのバンドの様子を観察し、卵巣にGnRHの受容体が存在することが確認できたときは、とても感動しました。私がゲルに移したのは卵巣の鋳型cDNAが含まれた溶液だったので、よい結果が出て本当にうれしかったです。GnRHの受容体のホヤ卵巣内で存在場所を確認するのに必要な卵巣組織切片を作る実験では、パラフィン包埋を薄く切ってちぎれないように注意しながら、スライドガラスの上に載せるのがとても難しく、何度も失敗してしまいました。苦戦の末やっと成功した時は嬉しかったです。切片を作るだけでも大変であることがよくわかりました。GnRHの受容体の細胞内での場所を観察するための共焦点傾向レーザー顕微鏡は、細胞を切らずに細胞の断面を観察できるので、画期的な技術だなあと感じました。実際、共焦点レーザー顕微鏡を使って受容体を観察することができ、感動しました。
 今回の実験で使用したのは、初めて目にする器具ばかりだったので、何もかもが新鮮でした。普通では触れることもできない器具で最先端の実験を体験でき、この実験科学教室に参加してよかったなあと思います。本当に研究員になったような気持ちで実験ができ、一生に残る貴重な経験になりました。研究員の方々はみなさんとても親切で、わかりやすく説明してくださったので、緊張することなく楽しむことができました。閉会式での佐竹さんの激励のお言葉にも、たいへん勇気づけられ、受験勉強を頑張ろうと、前向きになることができました。今回、お世話になった皆さんに感謝しています。ありがとうございました。

 私が、サントリーの最先端科学技術実験教室で最も印象に残ったことは、ホヤは脊椎動物の中では非常に珍しいセルロースで外皮が形成されている生物だということです。話によると共生している菌から得ているそうです。言われてみれば、確かに実際にホヤを触った時、その表面にはミカンの皮のような質感でした。実験室に飼育されていたのはカタユウレイボヤだけだったので、できれば他の種類のホヤも触って質感を比較してみたかったです。
 また、実験をしている時、失敗をしてはいけないというプレッシャーと闘っていたせいで、研究員の方々に積極的に質問できなかったことを後悔しています。しかし、そのおかげで最後に佐竹さんから誰もミスすることなく優秀であったとお褒めの言葉をいただき恐縮しました。今回の一日研究員の経験は、自分たちの進路に大変参考になりました。このような機会を設けてくださった先生方とサントリーの方々に感謝します。