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文楽の鑑賞

6月22日(木)、日本橋にある国立文楽劇場において、高校1、2年生が日本の古典芸能である文楽を鑑賞しました。文楽は初めてという生徒がほとんどでしたが、文楽の成り立ちや人形の動かし方の説明、実際に人形に触れる機会等も設けていただき、最後まで興味深く鑑賞しました。文楽は我が国の伝統的な人形劇であり、世界に誇りうる高度な舞台芸術ですが、この名前の由来はもともとこの人形劇を上演する劇場の名前だったものがいつの間にか芸能そのものを指すようになり、明治の終わり頃以降からは正式名称として使われるようになったようです。以前は“人形浄瑠璃”と呼ばれ浄瑠璃に合わせて演じて操るという人形芝居という意味であり、浄瑠璃と一体の人形を三人がかりで動かす“三人遣い”という独特の様式です。世界にはマリオネット、ギニョール、影絵人形など数多くの人形劇がありますが、これらのほとんどは人形を操作する人の姿を観客から隠すための手法が考案されているのに対し、文楽では人形遣いが堂々と観客の前に登場するという特徴があります。
 また,人形劇とともに文楽の舞台をささえるもう一つの柱である”浄瑠璃”義太夫節(ぎだゆうぶし)は、本来感情のない木でできた人形に生命を吹き込むという使命を有しています。そして登場人物のすべてのセリフだけではなく、その場の情景や物語の背景の説明まで太夫一人でやってのけるというまさに人情の機微を語り生かしています。さらに義太夫節の三味線も他の音楽の伴奏とは異なり、“心を弾く”ことを大切にしています。聞くところによると、文楽はお年寄りの楽しみと思われがちですが、最近では学生をはじめとする若い人の姿が目立つようになってきており、その素晴らしさに惹かれて入門する人も増えてきているようです。
 これまで私も外国の方から日本の歴史や文化についての色々な質問を受けたものの、十分説明できないということが何回もありました。わが国には文楽以外にも能や歌舞伎等世界に誇れるものが数多くあります。今後ますますあらゆる面でのグローバル化が進展しますが、日本の良き伝統や文化を理解し、後世に引き継いでいくことが大切であると思っています。