中学・高等学校の挑戦~②学校のビジョン
本校のビジョンは〝「人間教育の充実」と「学力の向上」を両立させた「関西を代表するすばらしい学校」をつくる〟というものです。私はこれまで4年間公立高校に勤務していましたが、私立と公立の違いはまさに学校のバックボーンが明確になっているかどうかではないかと思っています。このことについて雲雀丘学園の歴史も含めて紹介します。
本学園は昭和24年、鳥井信治郎氏を中心とし地域の方々の強い思いで創設され、実に56年の歴史を有しています。私も校長に就任後、学園の歴史を紐解いてみましたが、初代の鳥井理事長の入学式や卒業式の訓話の基本は、朝起きたら「おはよう」、学校から帰ったら「ただいま」、夜は「おやすみなさい」と挨拶せよ、親孝行の出来る人は人間としても立派になれる、という内容ものです。これが「孝道を大切にする」という本学園の創立の精神です。今、親孝行というと何か古めかしいことのように思われがちですが、最も身近な人を大切に出来ない人に社会のこと、日本のこと、世界のことを考えることが出来るだろうか、というのが初代理事長の考えであったと思います。
また、中学・高校の校是は「高志」「自律」「努力」ですが、今の世の中の風潮はこの3つが欠如してきているように思えてなりません。他人の迷惑を考えず、楽をして自分だけが良い生活を送りたいという傾向があまりにも多いのではないでしょうか。大切なことは、「高い志に根ざした目標を持ち、その達成のために日々たゆまぬ努力を続ける。そして絶えず素直に反省し、自責の念で自らを律していく」ということです。
多くの学校が進学率を偏重する中で、人間教育を最初に唱っている学校は珍しいと思います。学力の向上が必ずしも人間性を高めるということにはつながりませんが、人間性を高めることは学力の向上につながると考えています。