中学・高等学校の挑戦~⑤授業時間(量)を増やす
本校においては、来年度より中学・高等学校において授業時間を10パーセント以上増やすことにしましたが、この経緯について述べてみたいと思います。
わが国においては、ゆとりを目指す教育路線が打ち出されてから約30年が経過し、「授業内容の3割削減」「完全5日制の実施」「総合的な学習の導入」等がはかられてきました。これらがどのような結果をもたらしているかについては様々な見解がありますが、基礎学力については以前より低下したのは間違いありません。
2004年12月14日の夕刊で各全国紙が大きく報道した『基礎学力を評価する国際数学・理科教育動向調査』の結果では、1981年との比較において、数学は1位(20カ国中)から5位(46カ国中)に、理科が2位(26カ国中)から6位(46カ国中)に低下。またOECDによる15歳生徒の学習調達度調査(応用力の学力調査)では、2000年との比較において、読解力が8位から14位に、数学的リテラシーが1位から6位に低下しました。一方テレビの視聴時間は2.7時間と最長であり、宿題の時間は1時間と最短、家の手伝いの時間も少ないという結果です。
ゆとり教育を進めてきた背景には、知識詰め込み型教育に対する反省と授業のわからない子どもへの対処がありました。小学校から高校までの教育の内容を3割削減することで、〝小中学校ではスローペースでの学習が可能となり、まさに「ゆとり」の教育が実現できる。また「自ら学び、自ら考える」という学習につながる〟と考えられてきましたが、期待された成果があがっていないのが現状です。
ゆとり教育の歴史を紐解くと、1977年に初めて公立学校の中に「ゆとりの時間」という授業を取り入れ、中学校1年間で5教科学習時間が770時間から665時間に削減。1992年には、月に一度土曜が休みに。1995年には、月に二度土曜が休みになり、中学校1年間で5教科学習時間が665時間から560時間に削減されました。しかし、1999年に『分数ができない大学生』という著書が出版されたのを契機として学力低下論争が起ってきました。現在、一部の公立高校においては大学への進学実績の低落化に歯止めをかけるため、土曜日や夏休みに講習を実施しています。一方、ほとんどの私学では土曜日や夏休みに授業を行なう等授業時間数の確保につとめてきています。
現在、本校においては隔週土曜日授業を行なっており、週や夏休みには学年毎に全員または希望者に対し、正規の授業以外に講習や勉強合宿を実施しています。今回、学校全体として授業時間数の増加をはかり学力向上をはかるため、来年度から毎週土曜日の授業、夏休みの短縮(8月21日から授業開始)を行なうことにし、準備を進めています。