はかれない能力を育てる
私はこれまで民間企業で勤務していたこともあり、社会で活躍されている数多くの方々とお会いしてきましたが、これらの方にはいくつかの共通点があるように感じています。
(一)人間としての土台である人生観や職業観、社会観、倫理観といったものが確立している。
(二)お金や地位、名誉、名声という個人的な野心や野望というものを超えた世の中のために尽くすという〝高い志〟に立脚した夢や目標を有している。
(三)この目標の実現に向けて自らを律し、日々血の滲むような努力を傾注している。
(四)絶えず素直に反省し、常に感謝やお詫び、思いやりの気持ちを忘れず行動している。
(五)挨拶やルール、時間・約束の厳守等の凡事徹底をはかっている、等
といったものです。
これらは、すべて一朝一夕に修得できるものではなく、その人の人生におけるさまざまな経験の中から培われてくるものであり、『点数ではかれない能力』なのです。私の経験から言っても、実社会においては単なる知識はほとんど役に立ちません。何故なら課題(問題)に対して、こうすれば良いという正しい答えはないため、自分自身で見つけ出さなければならず、また多くのケースでは問題そのものを探し出すことから始めなければなりません。しかし、現在の学校教育は『点数ではかれる能力』を重視する「知識偏重型」になっており、上級学校への進学そのものが目的になっているように感じます。人間を木に例えるとしっかりと根を伸ばすよりも枝葉を繁らせることに注力しすぎているのです。今後益々グローバル化が進展する中にあっては、学歴ではなく何ができるのか、何をしてきたのかという能力や実績が問われる時代になってきます。二十一世紀における最大の課題の一つは教育ですが、人間力に代表される『点数ではかれない能力』の養成から始めることが大切であると思っています。
《2006年10月 兵庫県教育新聞への投稿文》