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日本の農業を考える~棚田の消滅~

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  わが国にはかつて山と山との間の傾斜地や丘陵地に階段状に作られた田んぼがいたるところに見られました。水が張り巡らされた水田には稲が植えられ、素晴らしい景観でした。これが「棚田」と言われるものですが、残念ながら最近はほとんど姿を消すことになってしまいました。
  この原因は、日本人の食生活が変わり米の在庫が過剰になったため減反政策がとられたことに加えて農村が過疎化したことがあげられます。棚田には道がなく狭くて急な畦に囲まれているため、機械化が困難です。そのため耕作には多大の労力が必要になり、農業従事者の高齢化に伴い真っ先に減反の対象になってしまったのです。しかし、棚田が消滅したことにより、さまざまな影響が出てきました。棚田は単に食料を生産する場というだけではなく山から流れ込む水を蓄え、水質を浄化し、土砂の流出を防止し、洪水を和らげる働きを有していました。いわば環境を保護する自然のダムです。また棚田は里山と接した湿地帯に作られていたため、トンボやゲンゴロウ、田螺(たにし)、蛙、泥鰌(どじょう)等の昆虫や水生動物のすみかになっていました。寒暖の差が大きく、水がとてもきれいなため、ここで生育された稲からは美味しい米が採れたのです。今、日本の色々な地区で棚田を守ろうという運動が推進されるようになってきており、平成11年からは「棚田百選」が制定されています。
  機会を見つけて一度これらの棚田を訪問し、わが国の農業について考えて欲しいものです。