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地球環境を考える~酸性雨の影響~

  地球を取り巻く大きな環境問題のひとつに“酸性雨”があります。自動車や工場から放出された大気汚染物質が雨水に取り込まれ、硫酸・硝酸・塩酸など強い酸性を持つことによって酸性雨となります。一般に自然の状態の雨はPh5.6と弱い酸性を持つのですが、環境省が1983年から多数の地域で行なった雨水の観測によると、年間の平均Phは4.7と強い酸性を持つことがわかっています。
  標高2000mの雲の上を走る日本最高の乗鞍スカイラインでは、有料道路沿いを中心に立ち枯れる樹木が増大しています。自動車の排ガスにはNOx(窒素酸化物)が多く含まれており、それが立ち込める霧や雲に吸収され強い酸性を帯びるため、樹木を枯れさせてしまうのです。北ヨーロッパや北アメリカでは酸性雨によって多くの川や湖が酸性化し、ひどい時には湖に魚が生息できない程の被害が出ています。水が酸性化すると、魚の餌となる水中の昆虫や貝やエビなどの甲殻類が減ってしまうからです。また土や水の性質の変化において、樹木の栄養分が不足し、樹木にとって害になる物質が取り込まれてしまいます。
  酸性雨は植物を枯らすのみならず、建造物も脆くしてしまいます。コンクリートのツララのようなものもしばしば見られますが、これはコンクリートに含まれるカルシウムが酸性雨によって溶かされてできたものなのです。
  日本の工場や火力発電所では、排出ガスを除去する浄化装置が導入されていますが、発展途上国ではこのような環境対策は不十分です。
  今日、我が国は中国などの高度成長に伴う工業化による環境の面でも大きな影響を受けています。酸性雨の原因となる大気汚染物質の多くが、偏西風の影響で海外から流入してきています。特にSOx(硫黄酸化物)などは、日本で確認されるうちのほぼ半分が中国のものであると確認されています。今後、近隣の国々の更なる発展によって、この大気汚染ひいては酸性雨が一層ひどくなることが懸念されます。これらの動向には色々な面で目を配ると共に、わが国の環境技術を更に高め、地球の環境を守るために役立たせることが必要であると思います。