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地球環境を考える~キューバの有機農業2~

  前回、深刻な食糧難を克服するために、キューバが国を挙げて有機農業と都市農業の推進体制の強化をはかったということを紹介しました。具体的には人々は空き地を開いて畑にし、トラクターを使う代わりに牛を使って土地を耕し、輸入できなくなった化学肥料の代わりに生ゴミを集め、ミミズを使ってそれを堆肥に変えることで土地の養分を増やしました。また、コンクリートのベランダや屋上に、ブロックやベニヤ板で囲いを作り、その中に堆肥などを混ぜた土を入れ、有機菜園に作り変えました。この有機農業は、まず人口の多い首都ハバナを中心に都市部から広がっていきました。燃料となる石油が少なく輸送コストがかかることを考えれば、近場で賄うのは理にかなったやり方です。この試みは成功し、キューバは輸入に大きく頼っていた食料を、ほぼ自給自足するに至っています。キューバ全人口の約5分の1を抱えるバハナ市域では、およそ8000を超す農場や菜園によって野菜消費量の半分がまかなわれています。
  また、近年では農業以外の分野でも、太陽光エネルギーを利用する、水汚染を微生物で浄化する、医薬品の不足を薬草や鍼灸で補う、といった自然やバイオを利用した様々な試みがなされています。農業に始まったこの自立・自給の目標は現在、教育・医療・福祉と様々な分野に広がり、高度な「自給自足の国」と呼ぶにふさわしくなっています。こうしてキューバは現在、有機農業・環境保全型農業、バイオの先駆国として世界中の注目を集めています。
  キューバのこのような試みには、多くの学ぶべき点があるように思います。現在の日本は石油価格高騰、低い食糧自給率、農薬や化学肥料主体の農業など、かつてのキューバを取り巻く状況に類似した点が多く見受けられるからです。90年代にキューバを襲ったのと同じような危機が、今後日本にも起こらないとは限りません。既に世界各地で行なわれている近代的な慣行型農業の生産性には限界が見え始めており、今後こういった試みが世界各地で必要になってくるでしょう。
  キューバのように屋上菜園が発展し、東京や大阪、名古屋、横浜、福岡といった大都市が自給する都市に生まれ換われば、食糧の確保だけでなくヒートアイランド現象の解消や生ゴミの減少にも繋がることになります。
  住民一人ひとりが地球環境を守るという視点に立って、このような取り組みの輪を広げていくことが大切ではないかと思っています。