人間学を学ぶ
講談社学術文庫より
江戸時代の儒学者であり朱子学や陽明学を極め、佐久間象山や渡辺崋山等を弟子に持つ佐藤一斉の著書に言志四録があります。
この中に、『少にして学べば則ち壮にして為すことあり、壮にして学べば則ち老いて衰えず、老いて学べば則ち死して朽ちず』と言う言葉があります。
人間が人となるためには、学ぶことが何よりも大切ですが、これには人間としてのより本質的な部分を探究する「人間学」と知識技術など世の中をわたっていく事に必要な学びである「時務学」とがあり、人間学は本学、時務学は末学と言われています。このうち「人間学」とは人間が持つ徳性である感謝報恩や奉仕、おわび、思いやり、真心といった動物にはない人間にしかない部分を学ぶというものです。
しかし、残念なことに、昨今のさまざまな出来事を見ると現代の日本人にはこれらがスッポリと抜け落ちているように感じます。かつての日本は裕福な時代でなかったために〝共生〟という助け合いの「和魂の精神」を育ててきました。しかし、物質的に豊かになり、すべてが足りているにもかかわらず、現状に満足することなく不平不満が当たり前になってきており、他人のことよりも自己の利を優先する風潮が強くなっています。このままでは日本の将来は決して明るいものにはならないでしょう。
これから輝かしい日本の未来を切り拓くためには、人々の心の面、精神面を鍛えていかなければなりません。
本校では人間教育の充実を掲げていますが、この実現のためには何よりもまず教師や保護者自身が人間学を学ぶという姿勢を持つ、言い換えると人間力を磨いていくことが何よりも大切であると思っています。