土用と鰻
昨日土用についてお話しましたが、土用という意味については知らなくても「土用の丑の日」には鰻(ウナギ)を食べるという習慣については子どもの頃から知っている人も多いと思います。
わが国では平安時代頃から鰻を食していたという文献が残っています。当時は「ムナギ」と呼ばれていたようですが、この語源は「胸黄」(胸が黄色い)とも、丸くて細長い形状が家の「棟木」に似ているからとも言われています。
土用の丑の日に食べる習慣が始まったのは、そう古いことではなく江戸時代末期です。夏の売上げ不振に困った鰻屋の相談を受けた平賀源内が「う」の字がつくものを食べると夏負けしないという民間伝承に因んで〝本日土用丑の日〟という看板を掲げたところ、飛ぶように売れるようになったと言われています。当時災いは丑の方角から来ると信じられていたことから厄除けという意味と、肉食の禁止されていた時代において高タンパクで消化も良く夏バテ防止に効くことから、瞬く間に江戸市民の間に定着していったようです。
また、鰻の血液にはイクシオトキシンという毒が含まれているため生で食べることはできませんが、火を通すと毒がなくなるということも先人はよく知っていて蒲焼という料理法を考え出したのです。
このように、我々にとっては身近な鰻ですが、その産卵場所はどこなのか謎に包まれていました。フィリピン海溝付近という説が有力でしたが、最近になってグァム島沖のスルガ海山付近であることが突き止められました。しかも、6、7月の新月の日に一斉に産卵することも判ってきました。
現在、日本における年間消費量は世界の鰻の約半数、13万トンと言われていますが、このうち80%は輸入に依存しています。また最近の鰻については産地偽装や抗菌剤の混入等の問題が相次いで発生しており、各国において稚魚の輸出を制限するという動きも出てきています。鰻を食される時には、このようなことも思い起こしていただきたいものです。