幼稚園での体験実習
本学園は幼稚園・小学校・中学・高等学校を有する総合学園ですが、今回はこの特徴を活かした取り組みの一つを紹介します。それは高等学校における家庭科の保育の授業に取り入れた幼稚園実習であり、例年この時期に実施しています。
近年、女性の合計特殊出生(しゅっしょう)率の低下に伴い、生徒達の兄弟・姉妹の数も非常に少なくなり、乳幼児との交流が難しい状況になってきています。このような状況の中で保育の授業を行なっても、子どもの個性や成長の個人差・発達段階などの明確なイメージを把握することはできません。この座学での限界を打破し、子どもの成長過程を自ら学ばせることを目的として、平成7年に本校に隣接している幼稚園にお願いし、高校生が幼稚園に赴き園児達の中に入って実習するということを始めました。その後、12年が経過しましたが、当初予想していた以上の教育効果を生み出しています。
高校生が子どもに対して抱いているイメージは非常に乏しく、全く想像もつかないのが現実です。日頃テレビや自分達の生活空間の中で見る断片的なイメージを表現させると、良い面では〝かわいい〟〝素直〟といったことがあげられますが、悪い面では、〝手がかかる〟〝うるさい〟〝面倒である〟〝生意気である〟といったもので、どちらかといえばあまり良いイメージを持っていないようです。しかし、この実習の体験後は、子どもの発達段階の違いや個性があることを認識するだけでなく、子どもがかわいいと思う気持ちや癒される気持ちが出てくるようです。また、自分が将来大人(親)になった時に必要な資質についても考えたり、自分達の成長過程において親だけでなく周りや地域の方など様々な人に支えられて成長したことを振り返る良い機会にもなるようです。
このように、幼稚園実習は本校の創立の精神に立脚した人間教育に大きく貢献する伝統的な体験学習の一つになっています。