日本の現状を把握する
過去の歴史を紐解くと、時計の振り子のように一方に振れると必ず逆の方向に戻そうとする力が働きます。日本はこれまでは多くの面での綻(ほころ)びを部分的に修正しながら何とか乗り切ってきましたが、このやり方では根本的な解決にはならないということは多くの人が認識しているはずです。人間に例えれば、慢性的な病気のために徐々に体が蝕まれてきており、投薬では健康を取り戻すことが難しい状況になってきているということです。健康回復のためには中長期の計画を作り、抜本的な生活の見直しをはかっていかなければなりませんが、先延ばしにしているというのが現状です。
しかし、今回の世界同時不況はさまざまな国において、これまでのやり方を抜本的に見直さなければならないという事態を招くことになりました。日本も例外ではありませんが、今はこれからの日本をどういう方向に導くのかを考える絶好の機会であると考えるべきではないかと思います。言い換えると、これまで日本が進んできた道を今一度振り返り、グローバルな視点に立って課題解決の方向を明確にしなければならないということです。
20世紀の日本の動きを振り返ると、終始欧米へのキャッチアップを目指し物質面での豊かさを追求してきたということになります。官が民を指導し、中央が地方を指導し、閉ざされた企業グループを構成することによって、経済成長と生活水準の向上をはかってきたのです。この結果、「〇〇化」と呼ばれるさまざまな変化が生じました。思いつくままに取り上げると、工業化、都市化、核家族化、高学歴化、情報化、少子高齢化、グローバル化等です。まずこれらの現状をしっかりと把握した上で解決のための方向付けをしておくことが大切です。