食べて保全
現在、北海道においては40万頭に増えたエゾシカによる環境問題に対応するために、さまざまな試みがなされていますが、その中の一つが『エゾシカ肉戦略商品開発支援事業』です。この事業は一口で言えばエゾシカの肉を〝食べて環境保全〟しようというものです。
日本ではあまり馴染みがありませんが、鹿肉は実に魅力的な食材であり、フランス料理では〝ジビエ(狩猟による鳥獣肉)〟の代表格になっています。豚に比べてカロリーは三分の一、脂肪は十分の一と低く、その上高タンパクで鉄分やアミノサンやミネラルも豊富です。通常、スーパーやデパートで販売されているのは牛肉や豚肉、鶏肉であるため、鹿肉については違和感を持つ人が多いと思いますが、猪肉と並んで代表的なものだったのです。
縄文時代には狩猟採集の生活で猪や鹿、ハマグリ、牡蠣、胡桃、栃、どんぐり等を食べていました。弥生時代になって農耕が始まってからも猪や鹿は犬と共に食べられていました。その後、仏教の伝来に伴い肉食が廃れ、天武天皇の時代には「肉食禁止令」が出されました。また、戦国時代以降においては牛や馬は農家にとって重要な働き手であったため、食べられることはあまりなかったようです。そして明治維新以降、牛鍋の流行につれて牛肉の消費が増加し始めたようです。また、今では犬や猿やウサギなどを食べることはありませんが、かつてはこれらの肉を食していたのです。
今月は環境月間であると同時に食育月間でもあります。先進諸国の中でも極端に低い食料自給率を改善するためにも、新たな取り組みをスタートさせることが大切であると思っています。