研修旅行後記 ~伊江島タッチュー
今回の研修旅行で生徒達が2日間滞在した伊江島の中央東寄りには城山(グスクやま)が位置しており、〝伊江島タッチュー〟と呼ばれています。標高はわずか172.2メートルで、山頂まで石段が続いています。石段を登り切るとエメラルド色の海に囲まれた島全体を見渡すことができ、素晴らしい眺望です。この一見何の変哲もないこの山は地質学から見ると極めて珍しいものだそうです。
伊江島の周辺では島が乗っかっている白亜紀(1億4000万~6500万年前)の岩盤の下に三畳紀(2億5000万~2億1000年前)の岩盤が潜り込んでいます。ところが、この三畳紀の岩盤が滑り込む際に岩盤の一部がはがれ、白亜紀の岩盤に乗り上げ堆積物となりました。そして、今から4000万~3000万年前に隆起し、その後堆積物が永年にわたって侵食され続け、やがて現在のタッチューの姿になったようです。
このように、ある地盤が潜り込む際に一部が剥がれ落ちて別の岩盤に乗り上げる動きは地質学的には「オフスクレープ現象」と呼ばれており、極めて珍しいものであり、実際に目に見える形で確認された例は地球上で他にはないようです。この事実は、琉球大学の海洋学科の氏家教授を中心とするグループが地層のサンプルを採取し、この中に含まれている放散虫(海の原生動物で年代決定の目安となる)を調べることによって証明しました。従って、現在の伊江島から突き出した形のタッチューは、実は島とは別の時代のもので7千万年も古いということになります。同じように見える沖縄の島々の生い立ちにも色々と興味深いことがあるものだと感じました。