入学式の式辞から~③凡事徹底の大切さ
高校の入学式においては、パナソニックの創業者である松下幸之助氏の2つのエピソードを取り上げましたが、今回はそのうちの一つを紹介します。
〝今から丁度30年前になりますが、昭和55年(1980年)に松下氏は突如として、〝将来の日本を背負って立つ政治家を自ら育てる〟と宣言しました。しかし、その時松下氏は既に85歳になっており、その上声も十分に出ないという状態でした。何故、今更この年になって、政治のことを言い出すのか。今、日本はうまくいっているではないか、と多くの人が感じており、松下氏のまわりにいる多くの人がこの考えに反対しました。なぜなら、当時の日本は卓越した製造力を有しており、世界中から羨望のまなざしで見られるような繁栄をしていたからです。しかし、松下氏は「このままでは、日本はいずれゆきづまる。何故なら、今の日本には目先のことしか考えていない人間、自分の損得だけを考えて行動している人間が多すぎる。そして、国家百年の計がない。だから政治家を育てるのだ。」と言って、資産を投げ打って、松下政経塾をつくったのです。
このことが発表されると、日本全国から入塾したいという人が続々と集まってきました。そして、その中から選び抜かれた塾生に対する入塾式が行なわれました。入塾者達は、松下氏がどのような話をするのか固唾を飲んで聞き入っていました。その時に言われたことは「まず、自分の身のまわりをしっかり掃除しなさい、整理整頓しなさい。自分の身のまわりを美しくすることができない人間に政治という大きなことは絶対にできない。」ということでした。この話を聞いて正直なところ、がっかりした人もいたようです。しかし松下氏は、永年の経験から「簡単なことの出来ない人間に決して難しいことはできない」ということを確信されていたのです。
伸びる会社は、訪問すればすぐわかる。「いらっしゃいませ、おはようございますという爽やかな挨拶が返ってくる会社」、「事務所や工場がキッチリと整理整頓されている会社」「トイレの掃除がゆきとどいている会社」。この三つのことができている会社は間違いなく伸びる。逆に、これらが出来ていない会社は、今、ある程度の業績であっても、必ず駄目になる。そして、このことは人にもあてはまる。当たり前のこと、簡単なことをしっかりやり続けている人は、間違いなく成長する。〟逆に凡事徹底ができない人は絶対に伸びないということでした。松下氏はこのことをいい続けると共に自分自身も実践されていたのです。〟
私達は日常の生活において、小さなことをおろそかにしがちですが、誰にでもできる凡事を徹底してやりぬく姿勢が何よりも大切であると思っています。