メタセコイヤの命を引き継ぐ
高校の新校舎の建設に伴い、植え替えをしたメタセコイヤから次々と新芽が吹き出してきました。随分大がかりな移植工事であったため、うまくいくかどうか心配していましたが、この分では多分根も十分に伸び順調に成長してくれるのではないかと思います。このメタセコイヤは以前、現在の場所から数メートル離れた中央棟前に植えられていました。ところが、建設の設計図が出来上がってくると、この木がどうしても建物にかかってしまいます。そのため、この木を切るか、さもなければ校舎の一部を変形するかという選択を迫られました。しかし、どちらをとっても問題が残ることになります。智恵を絞り、専門家の意見を聞いたところ、移植できるかもしれないという結論に達しました。そして、校舎建設に先立ち、大がかりな移植工事を行なうことになりました。
このメタセコイヤのルーツについて紹介すると、本校には、今回移植したメタセコイヤの親木があるのです。高校校舎と中央棟の間にもう一本メタセコイヤが植えられていますが、実はこの木が親木なのです。この木は生物学者であった三木茂博士から、今から55年前の昭和29年(1954年)に中学校舎竣工の際にお祝いの記念樹としていただいたものです。その後、昭和38年(1963年)高校校舎の4階を増設した時に親木から実を採って中央棟前に植えつけたのが、このメタセコイヤなのです。そして、日当たりの良い場所に植えられたため親木を凌ぐ高さに成長したのです。
このメタセコイヤは一時絶滅したと思われていましたが、今から65年前に中国の四川省で、化石ではなく実際に生育しているメタセコイヤの木が発見され、当時は〝生きた化石〟として世界中で大きく報道されました。この中国で発見されたメタセコイヤの種子がアメリカのハーバード大学に送られ、更にその苗木百本が日本に空輸されましたが、本校の親木はそのうちの一本なのです。
今回移植したメタセコイヤには何百万年という長い年月を経て脈々と受け継がれてきた命が宿っています。現在、本校は「環境教育」に取り組んでいますが、〝あらゆる生き物の命を大切にする〟ということは、環境教育の大きな柱でもあります。このメタセコイヤを生きた教材として語り継いでいきたいものです。