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自家自給率の向上

tusin163.jpg  ≪収穫した自家製野菜≫

  農林水産省が10日に発表した09年度の食料自給率(カロリーベース)は前年度より1ポイント低下して40%となりました。これで2年連続上昇していた自給率が再び低下するということになりました。
  これまで政府は自給率を向上させるために、米粉や飼料米、小麦、大豆の生産振興などを掲げ米粉や飼料用などコメの新規需要を開拓することで自給率向上の流れを定着させようとしましたが、08年後半から穀物相場が下落に転じた結果、パンなどの小麦製品が割安になり、コメ消費は再び減少してしまいました。
  政府がこの3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画では、それまで「15年度までに45%」としていた自給率目標を「20年度までに50%」に引き上げました。しかし、自給率の長期低落傾向が再び顕在化したことで、この政府の戦略は見直しを迫られることになりました。また、現実には農家の高齢化で耕作放棄地が拡大する等生産基盤の弱体化が進んでいます。一方で、世界の人口が増加するため中長期的には食料が不足するのは確実です。
  この問題については、まだ国民全体の危機意識は極めて薄いようですが、最近〝自家自給率〟を高める運動が提唱され、市民農園や自宅の庭で野菜作りを始める人が増えてきました。個人が野菜を作っても大した量にはならないと思われるかも知れませんが、私も実際に野菜作りに挑戦してみて予想以上に収穫できるということが解りました。
  政府の立場での大局的な戦略は不可欠ですが、多くの家庭がこのような取り組みを行なえば、少しでも自家自給率を高めることができるように思います。この活動の参考になるのは、キューバが国策として取り組んだ有機農業です。かつてキューバにおいては海上封鎖により、外国からの物資が入らなくなり、人々は空き地を開いて畑にし、化学肥料に頼らず生ゴミを集めて肥料化しました。この試みは成功し、キューバでは輸入に大きく頼っていた食料を、ほぼ自給自足することができるようになりました。そして、現在でも有機農業・環境保全型農業、バイオ農薬の先駆国として世界中の注目を集めています。更に、農業に始まったこの自立・自給の目標は現在、教育・医療・福祉と様々な分野に広がり、高度な「自給自足の国」と呼ぶにふさわしくなっています。
  わが国においても、終戦直後は空き地を利用して野菜作りをするというのが当たり前だったようですが、今、国民一人ひとりが自家自給率を高めるという意識を持つことが大切であると思っています。