高校全校朝礼~血の滲む努力で需要を創る
2月16日(水)、高校3年生にとっては最後となる高校の全校朝礼で次のような話をしました。
〝皆さんの中には将来企業に就職する人が圧倒的に多いと思います。産業界においては、建設、農林・水産、食品、化学、医薬品、鉄・非鉄、電機、機械、自動車、小売、金融、情報、運輸、サービス等の業種があり、さまざまな企業がそれぞれ工夫を凝らしながら活動を行なっています。
メーカーを例にとれば「新製品の開発」「物づくり」「販売」「材料の購入」「在庫管理」「資金管理」等があります。この一つ一つの成否が企業の業績に反映されることになります。これからグローバル化が進む中で、色々な企業が取り組んできて実践例を研究することは非常に参考になると思いますので、これから折に触れて紹介していきたいと思っています。
メーカーにとって販売を増やすということは経営上何よりも大切ですが、今日はチョコレートメーカーの取り組みについてお話します。物の販売には「お客様が必要としている商品を提供する」というものと「新たな需要を創造する」というものがあります。このうち、バレンタインデーにおける販売キャンペーンは後者です。
バレンタインデーにチョコレートを贈るという最初のイベントは、1958年(昭和33年)に行なわれました。これを企画したのは森永製菓や明治製菓といった大手メーカーではありません。本学園と同じ1950年(昭和25年)に創立されたメリーチョコレートという会社です。このイベントは営業主任であった原邦生氏(創業者の息子で後に社長に就任)によって開催されました。同氏はヨーロッパにいる知人から聖バレンタインの話を聞き、早速新宿の伊勢丹デパートでキャンペーンセールを行ないました。しかし、3日間で売れたのは、わずか30円の板チョコ5枚と4円のカード5枚の計170円だったそうです。それでも諦めずに、翌年にはハート型のチョコレートを作り「女性から男性へ」という文句を添えて売り出す等の新たな試みを行ないました。
続いて1960年(昭和34年)には森永製菓がバレンタイン企画を新聞広告として掲載しました。このような挑戦を続けることによって1975年(昭和50年)代になって、やっとイベントとして定着したのです。その後、職場の上司や同僚に対して贈る〝義理チョコ〟やバレンタインのお返しとなるホワイトデーのあり方等についても話題になりました。このような努力によって、今ではバレンタイン関連での販売は年間の12%~15%にもなっています。そして、既に紹介したように、最近では友達に贈る〝友チョコ〟や男性から女性に贈る〝逆チョコ〟が増えてきており、メーカー各社はこの流れに沿った仕掛けを次々と行なってきています。
現在、日本では色々な物の販売が伸び悩んでいますが、このように企業は何とか需要を拡大しようと血の滲むような努力を傾注しています。今日は海外での文化を日本流に焼き直した例を紹介しましたが、これからのグローバル社会においては、他の国で流行しているものを日本に取り入れる、また日本でやっているものを海外に展開するということが頻繁に起こってきます。そして、近年は先進諸国が新興国を中心としたマーケットに切り込もうとしています。まさにこれからは知恵を絞り出し、果敢に挑戦することが大切な時代になってきているのです。皆さんはこれからグローバル社会の中で大いに活躍して欲しいと思います。〟