ダム式経営の大切さ
本日、4月27日は松下幸之助氏の命日にあたります。松下氏が亡くなったのは平成元年(1989年)ですから、既に22年が経過したことになります。私はこれまで数々の優れた経営者の思想や行動、エピソード等を自分なりに書き留めていますが、松下氏と現在京都セラミックの名誉会長である稲盛和夫氏については特に関心を持っています。今日はこの二人の初めての出会いについてのエピソードを紹介します。
それは、稲盛氏が京セラを創業して間もない頃のことです。松下幸之助氏が京都で『ダム式経営」というテーマでの講演をされました。この講演の中で、松下氏は会社を経営するにあたって大切なことはダムを作り、余裕のある時に日々水を蓄えるように、人材、資金、技術等を蓄えておき、これを使って川がいつも一定の水量で流れているように事業を進めていかなければならないと説かれました。そして、講演の後に質疑応答があり、聴衆の一人が「どのようにすればそのような余裕のあるダム式経営ができるのですか?」という質問をしました。
松下氏は、「その答えは私も知りません。しかし、そのような経営が必要だと思わなければできませんな。」と答えました。これを聞いて聴衆の多くは笑いましたが、稲盛氏はこの言葉に「そうだ。まずダムを作ろうと思う気持ちがなければ絶対にダムはできない。」と深く心を動かされたと語っておられます。そして、これを機会にダムを作ろうと決意し、ついに京セラを世界に冠たるセラミック企業に育て上げることに成功されました。同じ物事をその場にいた人々が見聞きしていたはずなのに、稲盛氏だけがまったく逆の反応をしていたということです。
二人の共通点は何としても高い目標を達成するという〝ゆるぎない志〟ですが、何事を行なうにもこの志が不可欠であると感じています。