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日本における肉食の歴史

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  北海道では大繁殖したエゾジカを駆除し、この肉を食用にするという『エゾシカ肉戦略商品開発支援事業』を推進しています。この事業は一口で言えば「環境保護」と「エゾシカ肉の販売」という一石二鳥を目指したものです。
  現在、わが国においては、通常スーパーやデパートで販売されているのは牛肉や豚肉、鶏肉であり、鹿肉にはあまり馴染みがないため、違和感を持つ人が多いと思いますが、鹿肉は実に魅力的な食材であると言われています。豚に比べてカロリーは3分の1、脂肪は10分の1と低く、その上高タンパクで鉄分やアミノ酸やミネラルも豊富で、フランス料理では〝ジビエ(狩猟による鳥獣肉)〟の代表格になっています。
  かつて、日本人がどのようなものを食べていたのかを調べると、興味深いことが分かります。縄文時代には狩猟採集の生活で猪や鹿、ハマグリ、牡蠣、胡桃、栃、どんぐり等が食されており、弥生時代になって農耕が始まってからも猪や鹿は犬と共に食べられていました。その後、飛鳥時代になって仏教の伝来に伴い肉食が廃れ、朝廷は殺生を固く禁じるようになり、天武天皇の時代には「肉食禁止令」が出されましたが、この中に猪や鹿は含まれていませんでした。また、戦国時代以降においては牛や馬は農家にとって重要な働き手であったため、食用にされることはあまりなかったようです。そして明治維新以降、牛鍋の流行につれて牛肉の消費が増加し始めたようです。
  世界に目を開くと、宗教上の理由でイスラム教徒は豚を食べませんし、ヒンズー教徒は牛を食べません。私も猪や鹿の肉を食べてみましたが、それぞれの料理に工夫が凝らされており、美味しくいただきました。現在、日本においてはアメリカやオーストラリアから大量に牛肉を輸入してきていますが、もう少し鹿や猪に目を向けても良いのではないかと思っています。