グローバル化と空洞化
毎年、IMD(経営開発国際研究所)から発表される世界各国の競争力比較は「経済状況」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「社会基礎」の4分野での約300にわたる細かい評価項目から成り立っています。2010年の国際競争力の1位はこれまでのアメリカを抜いてシンガポール、2位は前年と同様香港、3位はアメリカとなっていますが、特に注目すべきは台湾、中国、韓国等のアジアの国々がランクを上げている中で、日本だけが大きく順位を下げていることです。この理由は「経済状況」が大幅に低下し、「政府の効率性」では膨張し続ける財政赤字が評価の足を引っ張っているからです。
これまで日本は経済一流、政治三流と言われてきましたが、近年経済にも翳りが出始めてきました。特に日本の法人税の高さは58カ国・地域でトップ、外国人労働者や外国企業の受け入れ態勢は不十分、製造業への派遣に対する制限、高い電力料金、関税障壁等の問題があり、企業は他国に比べて大きなハンディキャップを背負っているのです。これらが企業の国際競争力を低下させるため、国際企業は生き残りをかけて軸足を日本から海外に移す動きを加速してきています。これが〝空洞化〟と言われる現象であり、雇用情勢が一段と厳しくなるのは避けられません。今、弱者を救済するということで多くの税金が使われていますが、空洞化が進むと法人所得も個人の所得も減少することになります。この結果、税収が減り、国の財政は一層悪化することに繋がるのです。日本を再建するためには依存体質からの脱却が不可欠であるということをしっかりと認識しておかなければならないと思っています。