石油に代わるオイル
≪クルード・オイル≫ ≪筑波大学が発表した藻≫
20世紀は石油の時代と呼ばれ、石油は工業化の進展に大きな役割を果してきました。そして、石油なしには現在の便利で快適な近代社会が成り立たなくなっています。しかし、化石燃料である石油は有限であり、いずれ枯渇することは避けられません。そのため、石油に代わる代替エネルギーの開発が加速されてきていますが、近年、注目を集めているのが、藻から石油を抽出する技術であり、日本やアメリカをはじめ世界各国でさまざまな取り組みが始まっています。最初に石油に代わる物質として、注目されたのはトウモロコシやサトウキビなどの植物でした。これらの植物は石油と同等の物質をつくるのではなく、光合成でつくった糖を脂質(油)に変化させて蓄えますが、エネルギーを得るために、食料を犠牲にしなければなりません。その点、食料にはならない藻がにわかに注目されてきているのです。
最初に日本での例を示します。石油の成分である炭化水素を作る藻は複数の種類が知られていたようですが、筑波大学の研究チームが発見した「オーランチオキトリウム」という植物性プランクトンの沖縄株が従来の10倍以上の炭化水素を作ることが解りました。この植物性プランクトンを培養して生産すれば日本の石油を十分まかなえ、実用化すればガソリン1リットル50円以下になるそうです。これが本当に実現すれば燃料やエネルギー問題をはじめ社会環境などが激変するのは間違いありません。。
次はアメリカの例です。カリフォルニア州サンデイエゴのSE社は2008年5月に藻から原油とほぼ同じ成分の油を抽出する技術開発に世界で初めて成功し“グリーン・クルードオイル(GCO)“と名付けました。そして、テキサス州でコンチネンタル航空が世界で初めてGCOを混合したバイオ燃料による飛行試験に成功しました。藻を原料とするGCOは「食料と競合しない」というメリットだけではなく、従来のバイオ燃料と比べて次のような大きなメリットがあるのです。
① 藻は繁殖が速く密集して生えるため収穫の効率が良く1ha当たりの産油量が多い。(単位面積当たりトウモロコシの100倍以上)
② 食料が生育しない場所での生育が可能である。つまり、CO2と太陽があれば藻は育つ。
③ 既存のパイプラインが使える為インフラ整備の費用が安い。
④生産・輸送工程でのC02排出量が少ない、等。
石油のほぼ全量を輸入している日本にとっては大いなるチャンスがあるように思っています。何とか実用化に成功してもらいたいものです。