高等学校全校朝礼 ~インドネシアにおけるポカリスエット販売
10月19日(水)、爽やかな秋空の下、定期考査終了後初めての高等学校の全校朝礼を実施し、次のような話をしました。
〝定期考査の答案が返却されていると思いますが、間違ったところはしっかりと確認し、同じ失敗をしないようにしておいてください。
今日は健康飲料のポカリスエットの話をします。今、世界でこのポカリが爆発的に売れている国がありますが、どこか分かりますか。それはインドネシアです。私も以前インドネシアで生活していたことがありますが、インドネシアは赤道直下にあって、人口は2億4千万人、人口の90%はイスラム教徒です。約1万8千の島からなり、実にアメリカ合衆国の東海岸から西海岸の距離に点在しています。
大塚製薬がインドネシアでポカリを売り出したのは1997年ですが、当時飲料水の主流は甘い清涼飲料水でした。甘くないし酸っぱいと思われていたポカリを売るためには、新しい飲料であることを訴求し、長い目で見たビジネスを考えることが不可欠です。そのため通常の販売方法ではなく、文化や風土に根差した売り込みをはかることにしました。具体的には
①50人ほどの販売促進員を中心に足で稼ぐ営業をスタートさせた。
②赤道直下で暑いという気候風土の中で、熱中症予防や下痢や脱水症状の際の水分補給に役立つことを地道に訴え続けた。
③年間5千~6千回の販促会を開催し、口コミで市場を広げることにした。
④2004年に発生したデング熱(発熱し、高熱が続き発疹が出る)の大流行をとらまえて、健康飲料としての認知度を一挙に高めた。
⑤2005年から断食月(ラマダン)向けキャンペーンを始めた。宗教に立ち入るのは良くないと躊躇する日本人に、販売員たちは「ラマダンは文化」と気にかけず、ラマダン限定のTV・CMを作り、モスク周辺で礼拝帰りの人にサンプルを配った。等です。
価格は500mlのペットボトルで約47円ですが、2011年の販売見込みは6億本で、この10年で30倍になりました。これは、日本の販売量の半分に達する勢いであり、このまま推移すると、近い将来世界一の販売高になることが予想されています。この成功例でも分かるように、風土や文化の異なる海外市場を攻略するためには地に足のついた売り方が欠かせないということになります。〟
今、日本の飲料各社は円高を生かしたM&Aや海外拠点の設立等に動き始めています。サントリーも東南アジアでの戦略強化の一環として「サントリー食品アジア」をシンガポールに新設しました。これらの動きは飲料業界に限ったものではありません。これから多くの業界各社の動きを注視していきたいものです。