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注目すべき新技術~iPS細胞

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  今、わが国においては〝将来は暗い〟と思っている人が多いようですが、日本には注目すべき新技術が続々と生まれてきており、これらを活用することによって、限りない可能性が広がってくるのは間違いありません。しかし、これらの新技術については、あまり知られていないため、これから何回かにわたって紹介していきたいと思います。
  最初に取り上げたいのはiPS細胞です。すべての生き物は、色々な細胞で構成されていますが、元をただすと1つの細胞です。例えば人間は約60兆個の細胞からできていますが、細胞がどんどん分かれていって、多くの細かい細胞が手や足、頭、目、心臓、肝臓などの臓器を作り出し、次第に人の形になっていきます。言い換えると、赤ん坊になる前は、色々なものになる可能性をもった細胞のかたまりということができます。そこで、皮膚の細胞を取り出して、その細胞がまだ色々なものになる可能性があった時のような状態にもどすことのできる遺伝子を見つければ、色々な細胞を作り出すことができるということになります。これは時計の針を戻すという全く逆転の発想ですが、これまでは受精卵が細胞になってしまうと、時間と同様、元には戻せないと考えられていました。
  しかし、5年前に京都大の山中伸弥教授がその常識を覆し、あらゆる種類の細胞になる能力を持つ人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成に成功し米科学誌「セル」に発表したのです。山中教授はまず、マウスを使った実験で、マウスのしっぽの皮膚の細胞を、4種類の遺伝子を加えてiPS細胞に成長させ、色々なものになる可能性を持った細胞に変化させることに成功しました。そして、その細胞をマウスの体に入れて成長させることにより、神経や消化管組織、やわらかい骨が入り混じったかたまりに変化することを確認しました。次いで、人間の皮膚からもマウスのものと同じような細胞を作り出すことに成功したのです。
  この技術が実用化されると、これまで困難であると思われていた再生治療が可能になります。但し、現時点ではこれらの細胞はガン化する可能性が高いため、世界各国の研究者が競って研究を進めています。先日の新聞には、山中教授が実用化に向けての新たな解決策を発見したとの記事が紹介されていました。医学の進歩というのは本当に凄いと感じると共にこの技術の実用化に向けて多くの研究がなされることを期待しています。