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第54回 高校卒業式後記 ~式辞の中より

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  卒業式の式辞の中で、取り上げた「国境を越えた心温まるエピソード」を紹介します。
  〝私の高校時代の友人で、現在奈良県で『岡本内科クリニック』を営んでいる岡本新悟という人がいます。岡本氏は、6年前奈良県立医科大学に勤務していた時、バングラデシュから1人のレザという名の医師を迎えました。
  バングラデシュという国はインドに隣接していており、以前は東パキスタンと呼ばれていたところです。人口は1億6千万人で、世界では第7位、人口密度は都市国家を除くと世界で最も高くなっています。しかし、経済的には、1人当たりのGDPが580$(日本円に直すと約4万6千円)と極めて低く世界でも貧困国の一つにあげられています。
  レザ医師は名門のチッタゴン大学の医学部を最優秀の成績で卒業し、公立病院で勤務した後、留学生として日本にやってきました。実に真面目で控えめで、日本人以上に細やかな気遣いのできる好青年でした。
  やがて彼が4年間の留学を終えて帰国する時に、留学の思い出にということで東京見物をすることにしました。その時に彼がお願いしたいことがあるのですがということで、岡本氏に話しかけてきました。「私はパグラデシュに帰ったら、生まれ故郷のガジプールという村に病院を建てたいと思っています。その病院を建てるためのお金をお借りできませんか。バングラデシュでは、医者の資格を持っている人は、高い報酬でアラブ諸国に招聘され、それを国にいる家族に送金しています。実は自分もサウジアラビアから招聘されていますが、何とかお世話になった地元で貧しい人のために、医療活動を続けたい。父もこのことを熱望していますが、親戚がお金を出し合っても病院を建てることは不可能です。
  この話を聞いて、心を打たれた岡本氏は、しばらく考えた後、間もなく大学の定年を迎えることもあって、奥さんに内緒で自分の退職金を使って、「岡本海外医療援助基金」を創設し病院を作ることを約束しました。そして、昨年ついにこのレザという青年医師の夢が実現したのです。全く医療機関のなかった人口二十万人の村に初めての病院が建設されたのです。そして、昨年の暮れに、岡本氏は奥さん(医者)と共にこの病院を訪れ、診察も行ないました。
  しかし、貧しい患者の中には医療費が払えない人がたくさんいます。この人達を無料で診療するということになると、病院の経営が成り立ちません。そこで、岡本氏は病院に隣接した土地を購入し、そこにマンゴーの木を植えることにしたのです。そしてお金の払えない患者さんの家族に、このマンゴー園で診療費の代わりに労働奉仕をしてもらうことにしました。このマンゴーを収穫して販売することにより、その収入で病院を経営していこうというものです。更にこの事業が軌道に乗れば、貯えたお金を使って隣の無医村に病院を建設するという壮大な計画です。そのためにはマンゴーの木をたくさん植えなくてはなりません。現在、彼はその基金を集めるために、多くの人に働きかけを行なっています。そして、これからも毎年この病院を訪問するそうです
  まさに、この病院建設の事業はバングラデシュと日本を結ぶ心の絆であり、夢の懸け橋です。
  このエピソードは私達に三つの大切なことを語りかけています。
一つ目は「高い志」を持つ。
二つ目は「共に生きるという共生の心」を持つ。
三つ目は「感謝の気持ち」を持つ。
  世の中のために、人のために尽くそうとする高い志があれば、必ず道は拓けます。そして、志のあるところには、人、モノ、カネが集まってきます。
また、相手の立場に立って、物事を考え行動していれば、必ずそれは自分に返ってきます。
そして、自分が生かされているのだという感謝の気持ちを持ち続けていれば、必ず世の中を明るくしていくことになります。
  どうか皆さんは「高い志」「共生の心」「感謝の気持ち」を持って人生を生き抜いて下さい。〟

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