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6年を振り返って ①

9.jpg 22.9-27.jpg       《中学・高校の校是》            《初代理事長 鳥井信治郎氏》  

  3月末まで残り4日となりました。この6年間を振り返って、これまでの取り組みを紹介したいと思います。この内容は先般「私学経営研究会・私学経営」に掲載された『骨太のリーダー育成を目指して』を一部修正したものです。          
   
1.はじめに
  平成13年末、34年間勤務したパナソニック(株)を退社し、平成14年4月より4年間大阪府立の高等学校の校長として勤務した後、平成18年4月から雲雀丘学園中学・高等学校の校長に就任し、この3月末で6年が経過しようとしている。
雲雀丘学園は大阪府に隣接する兵庫県宝塚市にあり、昭和25年サントリー(株)の創業者である鳥井信治郎氏を中心とした地域の方々の強い思いで創設され、一昨年60周年を迎えた伝統ある学園である。現在中学・高等学校、小学校、2つの幼稚園があり、児童・生徒数は約2600名を有している。初代鳥井理事長の入学式や卒業式の訓話の基本は、〝朝起きたら「おはよう」、学校から帰ったら「ただいま」、夜は「おやすみなさい」と挨拶せよ、親孝行のできる人は必ず立派になれる〟というものであった。今、親孝行というと何か古めかしいことのように思われがちだが、最も身近な人を大切にできない人に社会のこと、日本のこと、世界のことを考えることができるだろうか、というのが初代理事長の考えであり、本学園の創立の基本となっている。

2.学校改革にいたる背景と基本の考え方
  平成18年当時は、公立・私立共教育環境が激変する中で、昭和60年に設置された高等学校の国際科が大きく募集定員を割り込み、国公立大学や難関私立大学への進学実績も横ばいという状況が続いていた。そして、このままでは近い将来、経営的に厳しい結果に陥るということを感じながら、思い切った学校改革に踏み切れないということになっていた。「雲雀丘学園の良さは何か」ということを尋ねると、誰からも「学園の持っている雰囲気や校風の良さ」という答えが返ってくる。これはどの時代にあっても変わることなく本学園に受け継がれている大きな伝統であるが、その一方で「授業料が高い割に授業内容は公立並み」とか「先生も生徒ものんびりしていて学力を伸ばせない」といった厳しい意見も数多く寄せられていた。
まさに、思い切った学校改革を断行し、新しい学校づくりを目指すということが急務であり、改革が遅れれば私学としての生き残りが難しくなるという状況であった。この中で、校長の姿勢として「新しい学校を一からつくるという不退転の決意で臨む」「外部から何を期待されているのかをしっかりと把握する」「教職員に危機意識を浸透させる」の3つを貫くことにした。
そして、新しい学校づくりにあたっては「原点に戻って創立の精神の体現化をはかる」「学校のビジョンを明確にし、生徒の育成を第一義に考える」「中期のあるべき姿を描き戦略を構築する」「良循環経営(入口・校内・出口を固める)を推進する」を基本に取り組むことにした。そして、学校経営の枠組みを構築すると共に、個々の取り組みについて「誰が」「何を」「いつまでに」「どうする」ということをスケジュールに落とし込み、円滑なPDCAサイクルがまわるマネジメントシステムの確立をはかることにした。pp01.jpg

3.創立の精神の体現化と学校ビジョン・戦略構築
  創立の精神には『孝道を人間の根本義と考え 社会のために尽くす精神を最も尊重し よりよい社会国家を生み出すべく 心を素直にもち すべてに感謝の念を捧げ 健康な体力とたくましい実践力をもつ強い人間を創ることを念願としています』と謳われている。また、中学・高等学校の校是は〝高志・自律・努力〟であるが、この意味は「高い志を持って自分自身を厳しく律し目標達成に向けてたゆまぬ努力を続ける」ということである。これらを実践することはまさに『社会で活躍できるリーダーの育成』に繋がることであり、学校改革にあたっての基本の柱にすえることにした。
学園のビジョンとしては、“「人間教育の充実」と「学力の向上」を両立させた「関西を代表するすばらしい学園を目指す」”というものが打ち出されている。従って、基本的には中高においてもこれを踏襲することにしたが、この中には時間軸が設定されていないため、平成25年(2013年)を最終目標年度とした「中期のあるべき姿」を描き、その目標を達成するための戦略として『学力向上をはかるためのコース制』と『人間力を育てるための環境教育』の導入を行うことにした。そして、平成25年度の大学合格目標を「国公立大学に80名」、「全員が難関私立大学をめざす」ということに設定した。

4.中高における新しいコース制の導入
4.1 高校にコース制を導入
  本校では昭和60年(1985年)に国際社会で活躍できる人材を育成するということで、高校に『国際科』を設置し、以降20年間にわたり『普通科』と『国際科』という2つの異なるカリキュラムに基づき生徒募集を行ってきた。しかし、近年グローバル化の進展に伴い、すべての分野で国際的なセンスが必要となってきた。また、学力差が大きい生徒達に対して一律のカリキュラムを採用していたため、十分な教育効果が得られないという弊害も生じてきていた。そこで、平成19年に、個々の生徒に対するきめ細かい進路指導を行うことを狙いとして、従来の普通科と国際科を再編成し、新たに「選抜特進」「特進Ⅱ」「特進Ⅰ」という3つのコース制を導入することにし、きめ細かい進路実現を目指すようにした。
「選抜特進」コースは東京・京都・大阪等の超難関国立大学を目指すコースであり、「特進Ⅱ」や「特進Ⅰ」はそれぞれ難関国公立、難関私立等を目指すことにし、年々変化する入試制度にも柔軟に対応していけるようにした。また、〝自分が希望する大学であれはどの学部であっても良い〟ということでは進学することだけが目的になってしまうため、早期に自分なりの進路目標を設定し、真面目に努力することによって、あくまで自分が進みたい国公立大学や難関私立大学の学部や学科に合格できる学力の修得をはかっていくことにした。そして、本年度より「特進Ⅱ」と「特進Ⅰ」を「特進」に一本化すると共にすべてのコースにおいて「国公立大学対応型のカリキュラム」を導入することにした。。

4.2 中学にコース制を導入
  翌平成20年には、中高6年を通したカリキュラムに基づいて教育を行う「一貫選抜」と、高校進学時に「選抜特進」「特進」のいずれかをコ―ス選択できる「発展」という2つのコース制の導入をはかった。「一貫選抜」は主として早くから将来の進学目標を持って努力している生徒を対象とし、進学目標は選抜特進と同じ東京・京都・大阪等の超難関国立大学である。「発展」は進学目標のスタート時期は早くなかったが、中学の3年間で基礎・基本と十分な応用力をつけて、中学課程を修了するという生徒を対象にしている。%E5%A4%A7%E9%98%AA%E7%A7%81%E5%AD%A6%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%8573.s.jpg

5.人間力を育てる環境教育の導入
  本校はこれまでもサントリー(株)から多くの支援を受けてきたが、平成19年より、人間力を高めることを狙いとした本格的な『環境教育』をスタートさせた。これは、現在地球上で起きている様々な環境問題は人間の行為そのものが原因となっているという認識に立って、〝環境に配慮することは、人に対する優しさや真心を育てることに繋がる〟ということから、人間力を育てるための大きな柱としようとするものである。具体的には、現在人類の最大の課題である水や食料、エネルギー、生態系の変化、温暖化、大気汚染といった各分野についての特別授業を展開するもので、〝本物に触れさせる〟ことをテーマに社会で活躍している一流の人材による講演等の学習を行っている。そして、単に知識を修得するというのではなく「学び 調べ 考え 行動する」ことを基本にしており、校外学習や修学旅行との連携をはかるようにしている。具体的には修学旅行や林間学舎での「植樹やサンゴの植え付け」をはじめ、「授業でのサツマイモの栽培」、「地産地消をテーマにしたエコ弁当作り」、生徒会を中心とした「トマトやイチゴの栽培」・「ゴミの分別」・「節電」・「雨水の利用」等の自主活動、生徒有志(環境大使)による「稲作」・「黒豆作り」、地元にある〝きずきの森〟の整備等年々環境活動としての広がりを見せはじめている。
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                                                     《続く》