6年間を振り返って ③
9.出口を固める
9.1 個人別進路目標の設定
最終の目指す姿は本人の希望を実現させることであるという考え方に立って、キャリア教育を進めている。具体的な取り組みとしては、高校入学時より、さまざまな職業の方を招いて体験談を聞く『職業人に学ぶ』や大学との連携を深めるための『高大連携講座』の開設、全国の30を超える大学の先生による『1Day College』の開催、全国の著名大学の合同説明会である『夢ナビ』への参加、大学のオープンキャンパスの見学等があげられる。このような取り組みを通じて、早期に個々の進路目標を立てさせることにしている。この時に大切なのは、将来どういう分野に進みたいかという意思を明確にさせることであり、大学の名前で選ぶということのないように指導している。その後、外部模試の結果等を踏まえて定期的にフォローする体制を確立している。また、多様化する大学入試(AO・推薦入試等)に対応できるように、小論文・面接等の指導体制の充実をはかっている。
《職業人に学ぶ》 《香川大学医学科進学者の講演》
《1Day College》 《小論文・志願書の書き方講座》
9.2 学校全体としての進路指導体制の確立
中高校「サクセスプラン(進路スケジュール)」の充実をはかり、時系列・年度比較が可能なシステムを構築している。また、進路指導に関する情報の共有化を使って、生徒個人の成績を確認することができるようにしている。更に必要な都度、予備校の先生による進路研修会の開催を行っている。
《高大連携講座》 《進路講演会》
9.3 進路実績の向上
平成22年には新たに高校のコース制導入時(平成19年)に入学した最初の生徒が、大学受験に臨み、国公立大学合格者が25名から50名と倍増、難関私学合格者(関関同立)が111名から161名と1.5倍になった。更に平成23年は国公立合格者が55名、関西地区難関私学合格者が246名となり、顕著な伸びを達成することができた。そして、今年は生徒の国公立志向が強まり、国公立大学合格者が67名(3月25日判明分)、関西地区難関私学合格者が177名となった。特筆すべきは、現役合格者が実に60名と9割を超えたこと、京都大学に3名、大阪大学にも8名、昨年に続いて医学部医学科に合格者を出せたこと等があげられる。
9.4 学年別(コース別)の進路数値目標の設定
新たにコース制を導入した年度から進路の数値目標を設定しているが、まだ精度は高くない状況である。この3年間は結果的に連続して前年を上回る実績になったが、次年度以降も前年を上回る進路目標を立てて取り組んでいる。間もなく中学にコース制を導入した最初の学年が高校2年生に進学するが、一貫選抜・選抜特進クラスが4クラスとなっており、更に本年度特進を含めた全コースに国公立対応型のカリキュラムを導入することにした。そして、この学年が大学に進学する2年後(平成25年度末)には国公立大学合格者80名以上(内部目標100名)を目指している。これの実現に向けて、定点的に学力伸長度を把握し、迅速な対応をはかる等、進路システムの一層の充実、定着化をはかっていく計画である。
10.業務革新とマネジメント改革
学校づくりにあたっては、「教職員の行動能力を高める」「職場の仕組みを変える」「風土改革をはかる」ということが大切である。このため原点に戻って新しい学校を一からつくるとい考えで、徹底した業務の見直しを行った。
以下、具体的な取り組みについて紹介する。
① IT化を積極的に推進すると共に業務の徹底的な分析を行い、重点特化すべき業務と合理化・簡素化する業務を洗い出すことにした。
② 徹底したコストの見直しと予算のゼロベース化を目指している。
③ 組織はできるだけ簡素化、大ぐくり化し、迅速な意思決定をはかる。また、必要に応じて、「プロジェクト」や「委員会」等の課題解決型の組織づくりを行っている。更に適性配置を推進することにより、人の働きを高めることを目指している。
④ 「チャレンジ目標制度」の導入により、全体目標と個人目標の整合性をはかることにした。また、業務量の適正な分担を行うために「一人一役みんなが主役運動」を推進している。
⑤ 「予防する」「芽生えの段階で手を打つ」「迅速に対応する」ことを基本とする危機管理の徹底を行うようにしている。また、家庭への迅速な情報伝達をはかることを目的として、NTTによる『緊急連絡網』の導入を行った。
⑥ 生徒の育成にあたっては「共育」と「共学」を基本にし、機会ある毎に保護者に訴えている。共育というのは〝家庭と学校が連携して生徒を育てる〟ということであり、共学というのは〝本校に集う生徒・保護者・教職員全員が勉強する〟ということである。このため、入学式や保護者集会、学年懇談会、学級委員会等色々な機会を通じて、このことをお願いしている。
《学級委員会》 《学年懇談会》
11.最後に
私はこれまで社会のさまざまな分野で活躍している多くの人とお会いしてきたが、これらの人には例外なくしっかりとした人間としての土台が確立している。そして若い時の苦しい経験が生かされているケースが多く、更に自己研鑽を重ねることにより、人生観、社会観、倫理観、人間観といったものが醸成されてきている。
今、わが国においてはいたるところで教育改革の必要性が叫ばれているが、国土も狭く、大きな地下資源もない日本にとってはまさに人材が最大の資源である。今後、情報化とグローバル化がますます進展し、新たな技術革新が起こる中で、活躍できる場は限りなく広がってくる。日本の将来は暗いと考えている人が多いようだが、世の中が大きく変わるということはそれだけチャンスがあるということである。学校は〝将来社会で役立つ力を育てるトレーニングの場である〟と考えるなら、単なる知識としての学力のみならず、自ら課題を見つけ解決していく力や人間としてのベースとなる志、思いやり、感謝、忍耐といった力の育成が大切である。将来の日本を背負って立つ「人間力と学力を兼ね備えた」骨太のリーダーの育成に全力を傾注していきたいと思っている。