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啐啄同時

 中国の仏教書「碧巌録」に、「啐啄同時」(そったくどうじ)という言葉があります。「啐は驚く、叫ぶ、呼ぶ」、「啄はついばむ」という意味です。卵の中のヒナが殻をコツコツつつくことを「啐」、ちょうどその時、親鳥が外から卵の殻をコツコツつつくことを「啄」と言います。両者が一致してヒナが生まれることから「絶好の好機、またとない好機」を表す言葉として使われます。卵の中のヒナがつついている(啐)のを親鳥が気付かなかったり、つついていないのに親鳥が殻を破って(啄)もいけないのです。同時でなければなりません。
 子どもは成長の過程で親離れをしていきます。親もこのタイミングで子離れをする必要があります。まさに「啐啄同時」が、子どもの自立にとって大切です。ところが、子どもは学校で集団で生活しています。子ども同士のネットワークを持っています。ともすれば、子どもの親離れの方が早く、親の子離れが遅れたりする時があります。自立の大切な機会を逃してしまいます。子どものサインを逃さないようにするには、子どものネットワークに負けない大人のネットワークが必要だと思います。
 学習活動における生徒と先生の関係も同じことが言えます。生徒が知りたい、学ぼうとしているサインを先生が見逃してはいけないということになります。この場合は、生徒がサインを出していないのに、先生が殻をつつくことの方が多いようです。だからといって、ただその機会をじっと待つということではありません。内側からつつかせるような準備や刺激を与えることが必要です。「啐啄同時」含蓄のある言葉です。