先施の心
アメリカの元大統領ジョン・F・ケネディが、日本の政治家で尊敬する人物として名前を挙げたといわれる上杉鷹山。ケネディが知っていたかどうかの真贋はともかく、上杉鷹山は莫大な借金を抱えた米沢藩を立て直したとして有名な人物です。米沢藩といえば、川中島の合戦で武田信玄と戦った上杉謙信が上杉氏の祖といわれ、忠臣蔵に出てくる吉良上野介の長男が藩主になるなど、なじみの深い人物が登場してきます。
藩の立て直しのためにいろいろな改革を行った上杉鷹山ですが、その中でも力を入れたのが教育といわれています。そのために招聘した人物が儒学者の細井平洲です。彼の教えの中に「先施の心」というものがあります。読んで字の通り、先(せん)は先(さきに)という言葉です。施(し)は施(ほどこす)です。「自ら進んで先に施す」、自分がして欲しいと思うことを先に相手にすることが大切だと説いています。藩主自らが模範を示すことの重要性を説いたといわれています。
先行き不透明な政治や経済情勢の世の中です。不安や閉塞感が漂う中では、「して貰って当たり前」、いや、「当然して貰える」という風潮も一部には出てくると思います。だからこそ、この言葉は生きてくると思います。「こうなったら良いな」とか「こうして欲しい」と思うことを、先ず気のついたものが行動を起こす。みんながこのような気持ちで行動できれば、とつくづく思います。「先施の心」、行動の指針にしたいと私は考えています。