トロイアの木馬
ギリシャとトロイアの戦争において、ギリシア勢の攻撃が手詰まりになってきたとき、ギリシャ神話の英雄で知将とされるオデュッセウスが木馬を作って人を潜ませ、それを城内に運び込ませて陥落させたという物語があります。この時に使われた木馬を「トロイアの木馬」また、「トロイの木馬」といわれています。知略に飛んだ作戦である反面、内通者や巧妙に相手を陥れる罠を指して「トロイの木馬」と呼ばれることがあります。
今では、「トロイの木馬」といえば、コンピュータのウイルスが有名です。メールの添付ファイルや自由に使えるフリーソフトの中にウイルスを潜ませ、ダウンロードした時に感染させます。感染した相手を驚かせたり、コンピュータのデータを破壊したりするものから、本人が気付かないうちに遠隔操作で他人にコンピュータを使われる「なりすまし」で犯罪に巻き込まれるというところまできています。目的を果たした後、ウイルスやコンピュータを使用した履歴を消去することまで行っています。このたぐいのウイルスが毎日20万種類もつくられ、ウイルス対策ソフトが追いつかないといわれています。ますます巧妙になり、ほとんどの場合、ウイルスに感染したかどうか判らないのが実情です。スパイ映画やSF映画顔負けです。
ノーベル賞を讃える新聞記事の片隅に、コンピュータ犯罪の記事があります。比べること自体おかしなことですが、これほど巧妙なウイルスをつくるには並大抵の知識や技術ではできません。片や病気で苦しんでいる人や医療に明るい光をもたらし、片や犯罪に手を染め人を苦しめる、誰のために、何のために学び、習得した知識や技術を使うか、ここを見誤ると大変なことになる良い例だと思います。