進む海洋の酸性化
青:北緯 10 度、緑:北緯 20 度、赤:北緯 30 度における pH。図中の数字は 10 年あたりの変化率(減少率)。pH の数値が低くなるほど(下に行くほど)、「海洋酸性化」が進行していることを示す。(11/20、気象庁報道発表資料より)
上のグラフは、東経 137 度線における表面海水中における水素イオン濃度指数(pH)の長期変化を表したものです。 ちょうど紀伊半島沖から南方の北西太平洋海域を調べたものです。海水は本来弱アルカリ性ですが、大気中の二酸化炭素(CO2)の増加で酸性化していると考えられています。「すべての緯度帯においてpH が10 年あたり約 0.02低下し、「海洋酸性化」が進行している」(同報道発表資料)とのことです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による報告書では「産業革命以前 (1750 年)と比べて pH は全海洋平均で 0.1 低下している」と指摘しています。過去250年間の5倍のスピードでpHが低下していることになります。このまま進むと海洋が大気から吸収できる二酸化炭素の量が減り、地球温暖化が加速することも懸念されているといわれています。
また、「海洋酸性化」が進行すると、サンゴ礁の発達や形成が阻害されたり、プランクトン、貝類、甲殻類といった生物の殻や骨格の成分である炭酸カルシウムが溶出し小型化するなど、海洋の生態系に大きな影響を与えるのではないかと考えられています。
地球温暖化が叫ばれ、CO2の排出規制が大きな問題として取上げられてきました。今回発表されたデータも、その取り組みの緊急性を訴えています。産業革命以降急激にCO2の排出量が増加してきましたが、科学技術も急激に進歩してきました。この力によって、CO2排出を減らす道が切り拓かれると信じています。