「やる気のスイッチ」は脳の中にあった
医学の進歩の中で、いろいろなことが分かるようになってきています。その中に、脳が行う記憶や情報の処理だけではなく、意欲や「やる気」といった問題にも科学的解明が行われるようになってきています。行動や運動における「やる気」は、予測される報酬の量に影響されるといわれ、その予測に、大脳基底核の「腹側淡蒼球(たんそうきゅう)」という部位の神経細胞が関わっていることが、自然科学研究機構・生理学研究所の橘吉寿助教と米国NIH(国立衛生研究所)の彦坂興秀博士らのサルを使った研究で分かったと報道されています。腹側淡蒼球こそ、得られる「報酬」を予測して、「やる気」をコントロールする脳の仕組みの一部であると考えられるそうです。「やる気」につなげる脳の仕組みを発見ということになります。
いままでから、脳は自分を守るため、重要な情報か否かを選択し、重要でないと判断したら即座に忘れるといわれていました。情報の選択を脳の自動処理に丸投げしている人は重要な情報をすぐ忘れるといわれ、記憶力を高めるには、意識的に情報の選択を行えば良いといわれていました。また、人間は何かを学ぶときに褒められた方がより記憶に定着し効果的に学習できるということも解明されてきました。昔からいわれている、子どもは「褒めて育てよ」ということも科学的に解明されたことになります。「やる気」が学習意欲や習熟度を高めることは今までも言われてきたことです。今回の研究で、どうすれば「やる気」を引き出せるようになるのかの解明が進むことに期待したいものです。