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「葭始生(あしはじめてしょうず)」

 曇り空のうえに、時おり小雨がぱらつく、うすら寒い一日でした。きょうから「雨が降って百穀を潤す」という二十四節気の「穀雨(こくう)」、七十二候では「葭始生(あしはじめてしょうず)」です。野山に新芽、若葉が芽吹くとともに、水辺には「葭=葦・芦」が生え始める頃と言う意味でしょう。
 葦は河川の下流域や干潟に生育する植物です。多数の茎が水中に並び立ち多くの水生動物の住みかや隠れ家になり、浄化作用も持っています。葦簀(よしず)や茅葺き屋根の材料として使われるなど人間の生活にも深く関わりのある植物です。昔の大阪市の上町台地の西側には海岸線があり、入り江となり葦が広大な茂みをつくっていたようです。住之江や墨江、芦原橋はその名残が地名になったと聞いています。葦も有名で古くから歌に詠まれています。「難波潟 みじかき葦の ふしの間も あはでこの世(よ)を 過(す)ぐしてよとや」(伊勢)や「難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき」(皇嘉門院別当)と百人一首にでてきます。また、「難波江や干潟の限り葦の角」は、正岡子規の俳句です。百数十年前に正岡子規が観た光景でしょう。今はビルが林立し当時を偲ぶ面影はどこにもありません。この間の都市の急激な変化が見てとれます。
 人類の進歩と都市化、これはある程度仕方ないことかもしれませんが、自然環境の保護や自然との調和とは必ずしも対立するものではないと思えます。