環境大使 校外学習
本校は平成26年度から平成28年度まで、経済産業省 資源エネルギー庁主催の「エネルギー教育モデル校」に選定されています。”次世代層へのエネルギーに関する理解促進”への取り組みを熱心に行っている関西電力の発電所を見学することで、環境大使のエネルギーや環境への意識を高め、学校全体への啓蒙活動へ繋げていきたいと考えています。
1月20日(火)環境大使と担当教員とで「堺港発電所・堺太陽光発電所」の施設見学に行きました。
関西電力PR館に到着し、まずは堺港発電所と堺太陽光発電所の概要について説明を受けました。堺港発電所は、既設の施設を維持しながら、48ヶ月間をかけて新たな発電所を建設し、環境へ配慮した運営、熱効率向上による二酸化炭素30%削減などを実施しています。本校にも太陽光発電パネルと電力表示プレートがあり、太陽光発電のメリット・デメリットなど日々身近に感じていることもあり、興味深くお話を聞くことができました。また、定期的に「きずきの森」の保全活動を行っている大使達は、発電所敷地内にあるというトンボ池や緑地保全区域などについても興味深く感じたようです。
発電所の緑地には9万本もの樹木が植えられ、ビオトープのあるトンボ池の看板には電柱をリサイクルとして使い、小道には工事で出た土を再利用しているそうです。発電に直接関わるもの以外にも環境への配慮が随所に感じられました。
説明後に、いよいよ実際の施設を見学します。慣れ親しんでいる電気ですが、どのように工夫され、生産され、私たちの暮らしに繋がっていくのかという過程を実際に目にする機会はそうそうありません。みんな真剣な面持ちで見学に向かいました。
まずは堺太陽光発電所に向かいます。甲子園球場5個分もの広大な敷地に7万4千枚のソーラーパネルがキラキラと並んでいる様は、なかなかの景観です。パネルは15度の傾斜で設置されています。これは、風圧軽減効果と、より多くのパネルを効率よく設置する効果、さらに雨によってパネル面が洗われ、メンテナンス軽減の効果もあるそうです。また、埋め立て地のため、地盤沈下に対応する設置工夫も伺いました。
CO2削減量は年に4000t!という、環境にやさしいこの発電所は、関西空港に着陸する飛行機の飛行ルートになっているので、パネルの間に赤いシートを敷き、「SOLAR SAKAI」というロゴを作ることによって、PRにも一役かっています。日々学校の環境活動のPRに努める環境大使としても、環境への取り組みにはPRと、周りの理解が大切な要因の一つであるという考えに立ち返る機会にもなりました。
美しく立ち並ぶパネル。パネルの法定耐用年数は17年だそうです。
大気温度25度の時が最も発電効率が良いことから、春・秋の中間季に最大出力を生むようです。
太陽光発電のメリット
① 原料のお金がかからない (太陽利用)
② NOX SOX CO2 などが出ない (音もでない)
③ ほとんど点検する必要がない
太陽光発電のデメリット
② 24時間安定した電気を作ることができない (天気・季節・温度など)
② 発電するためのコストがかかる (1kWh=約35円 火力発電の倍! 原子力=8.9円 石炭=約10円 天然ガス=約11円 石油=約36円)(2010年モデル)
③ 広い土地が必要
飛行機からみたらこのように見えるかも?(左側の窓側からみえるようです)
*堺港発電所パンフレットより
その後、再び広大な敷地内をバスで移動し、堺港火力発電所を見学しました。まずは、中央制御室を見せていただきました。以前の堺港発電所では、タービン建屋内にあったようですが、新しい堺港発電所では運営やメンテナンスを担当とする日勤者勤務室に併設されています。同様にシミュレーターエリアも中央制御室に備わっています。これによって日常的な業務を行いながら、トラブル対応の模擬練習を随時入れていく時間が確保しやすくなり、余裕ができた時間を有効に使って訓練できるようになったそうです。
火力発電は、他の発電と比べて負荷調整が得意で、必要電力量が低い夜に止めて、必要電力量のピーク時に向けて、その日の朝に立ち上げるということができます。堺港発電所では現在24時間稼働をしているそうですが、いざという時の起動停止操作練習などもここで行っているそうです。班別の業務が交代制で行われ、各作業エリア(メンテナンス・シミュレーション・管理)別に絨毯の色が変えられているなど、トラブルを防ぐための細かな取り決めが日常的にされている様子も見学しました。蒸気タービン模型ではチタン合金の丈夫で軽量な4mもの羽を見て、それが1分間に3600回転もするというお話や、ガスタービンのセラミックの羽根は一枚で高級国産車が一台買えるくらいの!?値段というお話では大使達も目を丸くしていました。
次にヘルメットを着用して、タービン建屋に移動しました。ヒューマンエラーを避けるため色分けがされているタービンが5機ありました。5機で、旧タービン建屋8機分と同じ量の200万KWの出力があるそうです。500m幅に並んでいた旧型が、新型では197m幅に収まっていて、新型がいかにコンパクトで熱効率が良くなったかが見た目にも感じられました。新型の熱効率は、旧型の41%から、58%にも上がっているそうです。
トラブルに備える工夫の一つとして、即時部品交換ができるように、一式の部品が倉庫に置いてあり、さらに大きなトラブルでタービン自体に障害が起こった時のために、部品だけでなくタービンそのものの予備も保存してあると聞きました。私たちの生活に根差した電気。トラブルへの対応は、質だけではなく、直ちに対応するという「時間」も重要なファクターになっているだと感じました。
施設内にはゴーっという音が響いていましたが、想像していたような騒音はなく、「環境への配慮」という項目に「静かな・騒音の少ない」というお話もでていたということを思い出しました。大使達が感じた音は、タービンの音が出す音ではなく、建屋全体の換気を行うための換気扇の音だと、後で教えてもらいました。
発電所前で写真を撮らせていただきました。大きな煙突!円柱は大型バスが充分通れる大きさ、高さは通天閣とほぼ同じとか。
*今回特別に許可をいただいた場所のみ写真撮影・公開をしています。ご理解・ご協力いただきました関西電力発電所の皆様ありがとうございました。
最後に向かったのはボイラです。排ガスはまだ600℃もの高温のため、これを有効利用してタービンを回し、最終的に95℃まで下げて排出します。ボイラの大きさは30m×45m!2100tもの重量があります。見上げる大使の目にもかなりの大きさに見えますが、このボイラもコンパクト設計の工夫が髄所にされているとのことです。一番の特徴は、従来の横型を縦型に変えた点で、下から上にむかってガスを通し、チューブは上から吊り下げることで熱膨張を調節しています。さらにチューブに切り込みが入って表面積を大きくすることによって熱回収を効率的に行っています。NOXを排出しないために、化学反応をおこす装置がついていて、アンモニアと反応させることによって、窒素と水に変えて排出しており、その効果で、反応前は40ppmあったNOXは4ppmの排出量になります。空気をとりこむためのフィルタは、3段階設置され、最終フィルタの精度は0.3μmの大きさの粒子まで取ることができ、これにより、汚れを取るためのメンテナンスの軽減にも役立っているとのことでした。新型発電所では旧型と比較して、CO2は30%削減、NOX60%削減、SOX100%削減 煤塵100%削減 などを実施しています。
最後に再びPR館にもどり、質疑応答でこれまでの疑問点などを伺い、少し自由時間をいただいてPR館のシミュレーションゲームを楽しみました。CO2退治アトラクションや、発電コントロールゲームなど、ふれたり、かざしたり、めくったりといった体験型のゲームは楽しみながらも学びの要素もあり、あちこちで歓声があがっていました。施設見学、説明、質疑応答など、もりだくさんの内容で貴重な多くの体験をさせていただきました。大使達にわかりやすく丁寧に説明をいただき、ご助力をいただきました関西電力の皆様に厚く御礼申し上げます。
お礼のご挨拶。ありがとうございました! 帰校。有意義な時間を過ごしました。