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2007年問題-何が問題か

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昨日の続き。団塊の世代が退職すると,一体どんな影響があるのか。

1 多額の退職金と企業年金負担

 図表5のように,一時退職金と代行返上後の企業年金現価(代行返上とは、企業の運営する厚生年金基金が、国の運営する厚生年金の運営を代行していた部分を国に返上すること)を合わせた額は、団塊の世代が退職する3年間で、最大77兆円にのぼり、それまでの3年間に比べ、1.4倍ほどになると見られる。一時退職金は、団塊世代の退職が終わると、前の水準に戻るが、企業年金の毎年の支給額は、そのまま高水準が続いていくことになる。バブル崩壊後、年金基金の運用利回りにマイナスが生じ、企業の補填が重くなってきている上に国家予算にも匹敵するこの桁外れな負担に,果たして企業自身が耐えられるかどうか。
 財務省が2004年に公表した「団塊世代の退職と日本経済に関する研究会報告書」でも、団塊世代への退職金が企業の財務リスクを高める可能性が指摘されている。報告書によれば、東証一部に上場している企業の約1割で、退職金と企業年金の負担が株主資本を完全に上回っており、負担が株主資本の50%以上という企業も2割にのぼるという。ようするに一流企業の3割が、退職金や企業年金の一時的な増大によって経営危機に陥るおそれがあるということだ。
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 しかし,毎年の賃金・給与支払い額だが、図表6のように、最も支払額が多い集団が退職し、新卒者等に入れ替わることで、年間の給与支払額が数兆円減少することになり、この効果は、現行の賃金体系や労働力率が変わらない限り、団組ジュニア世代が40歳代後半に至る2010年代後半まで継続することになる。20070104fig2.jpg

2 個人消費の低下

 財務省の財務総合政策研究所の試算によると,団塊の世代の退職によって,日本経済は2010年度に約16兆円のGDP(実質国内総生産)を失うという厳しい結果が出た。彼等自身の退職が経済の縮小を招き,結果的に定年後の再就職をも難しくしてしまうおそれがある。

3 人材の空洞化・人手不足と外国人労働者の増加

 図表7は、どの業種で、団塊の世代を含む、50歳代後半の世代の社員が多いかを見たものであるが、団魂の世代は、製造業の方が多く、製造業の中でも、加工と素材を分けると、素材業種で、その世代の比率が高くなっている。このまま国が新たな対策を講じなければ、2015年までの10年間で、わが国の労働力人口は約410万人も減少するという。厚生労働省の雇用政策研究会の報告では、高齢者や女性の再雇用などの対策が提言されているが、それだけでは、将来の労働力不足は補えない。一挙に外国人労働力に頼らざるを得ない状況が来るのではないかと想像する。それによって,社会は大きく変貌していくのかも知れない。

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(図表は,三井トラスト・ホールディングス-「団塊世代の退職と高齢者就業問題」より抜粋)