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2007年問題-最後に

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 「2000年問題(Y2K)」を憶えていますか? 当時はハードディスクの値段が高く,またOS(基本ソフト)の制約から、大きな容量を扱えず、なるべく工夫してコンパクトなファイルにする必要があったために,業務フローに従ったプログラムでは,西暦4桁のうち下2桁だけを使用して,プログラム容量をできるだけ抑えていました。ところが,1999年から2000年に変わる時、「99(1999年)」が「00(2000年)」となり、2000年を1900年と誤認識して色々なシステムで不具合が発生するのではと危惧されました。これが「2000年問題」です。結構話題になり,成り行きが注目されていたのですが,細かなトラブ ルはたくさん発生しましたが局所的な影響だけでした。1997年頃から既存プログラムのチェックをし、事前に修正したり2000年問題を機会にシステムの再構築を行う等、事前準備が功を奏したようです。

 さて,もう一つの2007年は,このシステムに関わる問題です。つまり,団塊の世代の退職によって,IT現場からレガシーシステムを開発してきた世代がいなくなることが問題になっています。
 「レガシーシステム」とはいわゆるメーンフレーム(大型汎用機ともいい、大量のデータ処理をおこなうためにつくられた大型の高性能コンピューターのこと)を動かしている旧式の情報システムのことです。今も現役で使われています。大企業であれば大型コンピュータですが,中小企業ではもう一回り小さいオフコンで作動しています。

 問題は,このレガシーシステムの多くがフォートラン(FORTRAN)という科学技術計算用のプログラミング言語で書かれていることです。フォートランは,1957年にIBMで開発されたかなり古い言語で,現在の色々なプログラミング言語の祖先にあたるといってもいいでしょう。博物館入りしてもおかしくない古い言語ですが、地球環境のシュミレーションや分子設計、遺伝子解析などバイオ部門などに使われているスーパーコンピューターでも使われています。そして,このフォートラン言語で作られたプログラムにはそのときの担当者のノウハウが山のようにつまっていて,トラブルに対して非常に強く,信頼性、安定性に優れ,人類の財産になっています。

 レガシーシステムを作り上げた技術者の多くは,1960年代に入社した団塊の世代です。会社の業務フローを書き、現場業務を経験してプログラムを書き上げました。今のコンピュータ技術者には,現場業務の細かなところまではわかりません。必然的に大型コンピュータの面倒を見るのはベテランとなり、若手は現在のクライアントサーバーシステムやウェブシステムなどを担当し、棲み分け状態となってしまいました。ベテランから若手への技術継承ができていないのです。

 2002年,第一勧業銀行,富士銀行,日本興業銀行が合併し,みずほ銀行が発足したとき,口座の二重引き落としや口座振替システムに深刻なトラブルが発生しました。富士通(第一勧銀),IBM(富士銀行),日立(日本興業銀行)それぞれのメーンフレームを動かしているシステムは,団塊の世代の技術者が構築したもので,統合作業に携わったのは若手や外注業者ばかりだったといいます。業務に精通し,長年にわたって保守を手がけてきた社員がいなくなったとき,同じようなシステム障害が発生するのではないかと懸念されています。

 図表8は,団塊世代の退職に伴う技術や技能の伝承の困難性を事業所に尋ねたもので,それを業種別,規模別に整理したものです。製造業が非製造業に比べ,2007年間題を重く考えていることがわかります。また,規模別に見ると,中小企業より,大企業の方が困難化すると考えています。
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 図表9は,有効求人倍率を見たもので,専門的・技術的職業だけで見ると,1.89倍と,求職に対し2倍近い求人が来ています。グラフにはこの専門職・技術職の中で倍率が高いものだけを載せていますが,機械・電気技術者,情報処理技術者が圧倒的な求人超になっているほか,鉱山技師,土木・建築技師などでも倍率が高くなっています。技術や技能を持った人材への需要が団塊の世代の退職前に急増し,一部で供給不足が生じていると見ることができます。
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(図表は,三井トラスト・ホールディングス-「団塊世代の退職と高齢者就業問題」より抜粋)