英単語はどうしよう?
先日の連休の間、法事で故郷に帰ってきた。盆暮れには毎年のように帰省しているが、5月の田舎に触れるのは、よくよく振り返ってみると、実に40年以上の昔のこと、大学に入学して以来のことである。最近では特急「スーパー白兎」が速くて便利なので、鳥取まで行き、そこから兵庫県の県境の我が家に帰ることにしている。
列車の外の新緑でむせかえる風景は実に美しく、山の所々に薄紫色に染まっている所がある。今住んでいる家の近所ではほとんど見ることのない藤の花である。「ああ、今は藤の季節なんだ。」と思う。そう思って見回すと、山ツツジもあちらこちらに咲いている。レンゲの花で埋まっている畑もある。彼方にちらちら見えるのは朴(ほう)の花である。朴の花を見るのは40年振りである。よくよく見渡せば枚挙に暇のないほど色々な花が咲いている。「百花繚乱」という言葉があるが、そんな感じである。帰るのはいつも暑いか寒いかの盆暮れであるから、田舎にこんな風景があるのをすっかり忘れていた。
花に触発されたせいか、勃然と40年前の私が甦ってくる。この鳥取から我が故郷の駅の区間は以前の私の通学路に当たるのである。私の中学・高校時代はこの区間を汽車(電車ではない)に乗って通学したものである。煤煙の臭いが鼻先をよぎる気がする。
昔の山陰線の列車は、今の阪急電車のロマンスカーのように、二人ずつが向かい合わせの座席になっていた。帰りの40分間はこの座席に座って宿題があれば宿題をした。大抵は列車の中で片付いた。家で宿題をしたことは(長期休暇中のものを除けば)ほとんど記憶にない。宿題のないときは文庫本を読むか、単語を覚えるか、眠るかしていた。
ところで、その単語ですが、私は次のようにやっていました。受験生諸君の参考になるかもしれません。買い求めたのは旺文社の「赤尾の豆単」と呼ばれていた単語集です。今でも旺文社の受験用の単語集は、「ターゲット」のように受験生に人気があるようですが、この単語集は超ベストセラーで、当時の受験生たるもの大抵持っていました。編者は旺文社の社長の赤尾好夫氏でその名前のようにポケットに収まるような小さな本でした。見出し語の単語と熟語、それに派生語を含めると1万を超えており、これだけ憶えておれば受験用としては先ず十分な分量です。しおりが入っていて、それには「人間は忘れる動物である。忘れる以上に覚えることである。」などとありました。このしおりで英語か日本語のどちらかを隠してチェックするのである。1回目は鉛筆で小さいチェックマークを入れる。入れた後、そのチェックマークの入った語を憶えるべく何巡かする。大体憶えたかなと思った時点で、本当に憶えているかどうか試してみる。憶えていない単語には今度は鉛筆で下線を引く。又、何巡かしてチェックする。それでもまだ憶えていない語は鉛筆で四角に囲む。又、何巡かする。次は赤鉛筆でチェック。その次は赤の下線、次は赤で囲む。といった具合にやっていき、一番最後は赤で塗りつぶす。これで一応終わりです。勿論これで全部覚えたわけではない。新しくもう一冊買い求める。白紙の状態で同じことを又新たにやってみるといった具合です。これで片道約40分の車中の時間をつぶすことができました。
こういう英単語の憶え方は邪道とは言わないまでも、少なくとも正道ではないことは確かです。単語はやはり文脈の中で覚えるべきもので、実際の評論文、小説などを読んで憶えるべきものですから、できればそうしてください。高1、高2の夏休みなどの長期間の休暇はまとまったものを読む絶好のチャンスです。ところが高3になると、そうも言っていられない、やることは山ほどあるので、英語ばかり、その中でも英単語ばかりやっていられるものではありません。ここのところは各自工夫をしてやってみて下さい。大切なのは習慣づけることで、毎日決まった時間に何分間か割いてやることが大切です。