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キャリア教育について考える final

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fig20070813.jpg 「東京大学大学院教育学研究科教授の市川伸一さんは、「学習意欲説」という面白い話をしています。子供の勉強の要因を充実志向、訓練志向、実用志向、関係志向、自尊志向、報酬志向の6つに分けて考えていて、外発的で学習の効率が高いもの、学習の効率が高くて学習内容の重要性が低いもの、つまり勉強そのものが目的ではなく、勉強を手段として考えれば考えるほど学習の意欲は継続しにくいと指摘しています。学習そのものが面白くならないと意欲は継続しない。学習が目的や手段だと、逆に意欲が続かないというわけです。この勉強をやれば将来役に立つとか、こんな仕事に就けるとかでは持続しない。報酬を得るための手段ではないということです。(一番いいのは充実志向で、学習自体が楽しい。訓練志向は知力を鍛えることで、続けると試験で点が上がる。鍛えるともっと上がっていくということ。実用志向は日々の仕事や生活に生かせるということ。関係志向はみんなが勉強してるから一緒に私も勉強しようとつられるタイプ。自尊志向はプライドとか競争心から負けられないと勉強するタイプ。報酬志向は報酬を得るための手段として勉強する、非常に合理性、功利性が強いものです。)

 最後に、キャリアという言葉の語源が馬車の轍(わだち)であることを付け加えておきます。つまり、キャリアは「来し方」や「足跡」であって「行く末」ではない。キャリアというのは「展望する」ものではなく、結果として「振り返るもの」であるわけです。日々自分なりのポリシーを持ち、主体的に仕事をし、豊かな人間関係を保ち、みずから人のためになることをするといった、価値観の問題が重要になる。人のために何かやって、何かが返ってくると考えずに、黙々と活動しいる人は、思わぬ所で思わぬ人たちから、チャンスを与えられたりする。それは逆算でできるものではありません。振り返った時にあなたの足跡ができている。それがキャリアということです。」(駿台アセントvol.2『始めに職種ありき』のキャリア教育は大間違い」から)

 こどもの学習意欲減退解消のために,将来の夢をもって引っ張ろうとするのは,大人の考えたリニアなモデルでしょう。そのモデルに,残念ながら,子どもはそれにのってきませんし,逆に益々学習が手段化してしまいます。家で勉強をまったくしない子がいたら,「そんなんで将来どうすんの!」「欠点とってもしらんでぇ」と言っても彼等は素直に勉強を始めはしないでしょう。

 最後に。繰り返しますが,キャリア教育は,社会的自立を支援する合科的な教育です。本来はすべての教科・科目にその使命が含まれています。ですから,素直な目で,「面白いなぁ~」「ふ~ん」「へぇ~」って思ったそこが,キャリア教育の始点です。教育の原点は変わっていません。