入試の採点はどのように行われているか。
記述問題の採点はどのように行われているのだろうか。もちろん,採点基準に則り,公正に行われているのだが,実際に担当する大学の先生はどうしているのだろう。
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ともかく、今年も、「おお、こんな勘違いをする人がいるんだ、これは、この部分は理解しているわけだから、半分くらいの点はあげよう」とか「ううむ、ここまでわかっていないのは、受けた教育が悪いんだろうなあ。どこまで部分点をあげたものか・・」などと延々と議論しながら採点基準を決めて点をつけました。ともかく、まちがい方のパターンというのは、われわれ出題者(というか、プロの物理屋)の想像をまったく越えてバラエティーに富んでいます。個別のまちがえた答案に直に接してみて、どこでどのように混乱して、どうまちがえたかを考えて、汲み取るべきものを汲み取っていくのが、採点でしょう。
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ぼくらは、今でも、筆記試験をおこない、物理の教員が総出で採点する。一枚、一枚、答案を読み、計算間違いや勘違いがあれば、それも解読し、そこから先の(間違った結果にもとづく)計算も付き合ってフォローし、考え方が正しければ部分点を与える。新しい間違い方のパターンがみつかるたびに、採点グループ全員で相談してどれくらい評価するかを検討する。もちろん、判読不能に近い悪筆や汚い図なんかも、一生懸命に解読するのだ。
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入学試験では,正しい方向にはっきりと向いている答案にドンと点を与え,ちょっとその中で使う公式を覚えていたから書いておいた,というようなものには,たとえそれが確かにその問題の解答の中で利用するものであっても,それで1 点2 点を与えるというような採点の仕方はしないようにしています。
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採点者は,答案に書かれていない行間を自分の頭で補って,その補ったことに対して点を出す,というようなことは決してしません。入学試験の答案は,書かれていることだけが受験生の考えたことであって,書かれていないことは考えていないことである,という扱いがされるものです。必要なことはきちんと言葉で書き入れておくことが大切です。
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例年のことなんだけれど、文字はぐちゃぐちゃ、計算も完璧とは言えずしょうもないところでポカミスをする、しかし、妙に物理に対するセンスは鋭くて、ぼくらもびっくりするようなショートカットで本質をぴたりと見抜いているという、いわゆる「くせのある」答案をみると、「ああ、これって、きっと○○君みたいな奴だぞ」と今の学生さんや卒業生の顔が浮かぶ。こいつはきっと入学してくるから、大いに鍛えて励まして、このセンスを磨いてやろうなどと思って、みんなでそういうことを話したりもするのだけど、もちろん、入試の採点のときには名前はもちろん受験番号さえわからないシステムになっているから、そういう「追跡調査」はできないのだ。ちょっと残念ではある(もちろん、入試の公正はすべてに優先するから仕方ないのだけど)。