« 入学前の諸君へ | メイン | 不本意の春(2) »

不本意の春(1)

 今回は未だ進路が決定していない諸君に向けて書きます。

 進路未決定の諸君でまだ受験機会が残っている人は最後まで頑張り抜くことです。まだ3月入試が残っています。その中に自分の希望する大学があれば、しつこく食い下がって頑張ってください。合否の判定をするのは大学側です。君たちではありません。君たちがやるべきことは向こうが根負けするまで頑張るだけです。

 それでもうまくいかず、浪人を余儀なくされることになるかもしれません。しかし、長い人生の中で浪人することがそれほど不利益になるとは思いません。蹉跌のない人生が必ずしも豊かな人生とはいえません。挫折が人間を鍛え上げ、幅のある人格に仕立て上げることはよくあることです。

 浪人生活は孤独で不安がつきまといます。受験に失敗したことに伴う自信喪失、一人だけ取り残されたような、自分だけ置いて行かれたような孤立感、現役の時のようにクラスメートに囲まれているわけでもなく、まして、多くのクラスメートが進学を果たしているのをみると、うらやましくもあり、感じるのは焦燥感ばかり・・・毎日がほとんど同じ日常生活・・・体育大会があったり、文化祭があるわけではありません。

 しかし、孤独を回避しないようにしてください。不安と寂しさのあまり大学生のクラスメートの誰彼となく電話をかけまくったり、果ては一緒になって遊び呆けたり・・・というような愚行は厳に謹んで下さい。つまり、自分自身との戦いの部分が現役の時に比べるとはるかに大きな部分を占めるようになることを肝に銘じてください。受験が神経戦の要素があることは今まで何度も書きましたが、一番当てはまるのが浪人の受験生です。

 浪人生活の特徴は拘束されることが非常に少ないことです。予備校に通う場合でも基本的には出席は任意でしょう。まして、自宅で勉強する人にとっては、すべてが任意といえます。すべて自分の意のままの生活ができます。従って、自分が自分に対して暴君にならないためには、自分以外の尺度によって自分を律することが必要になってきます。どんな人間にとっても、時間の流れはどうにもならない客観的尺度です。時間に支配されないためにも時間に従って行動してください。つまり、気分で行動するのではなく、意志を堅固にもって、規則正しく生活を律してください。起床、就寝の時刻、食事の時刻、とりわけ学習の時刻、散歩などの運動の時刻等々を決めてそれに従ってください。そして、その時刻になれば、気分が向こうが向くまいが机に向かってください。そうしていれば自然に気分が乗ってくるものです。ただ気分が乗りっぱなしで暴走すると明日が台無しになることも考えに入れて置いてください。
 人間の体内時計は25時間だそうですから、体内時計のままに寝起きしていると、1日に1時間ずつずれる勘定になり、大変なことになります。浪人生が特に気をつけなければならないのはこの点です。どうしても生活が夜型になってしまいがちです。ひどい場合は、夜が明けてきたからそろそろ寝ようかなどという惨状を呈することになります。こうなるともう心身のリズムがすっかり狂ってしまい、元に戻すのに大変苦労することになります。試験というものは昼間に行われるものだということを念頭に置いて生活することが特に浪人生には必要なのです。
      
文責: 山本正彦