黒﨑伸子(国境なき医師団日本会長)の話 -その2-
<MSF(国境なき医師団)を目指すにはどんな知識や能力が必要ですか?>
2年以上の実務経験と広い視野で自分で考える力、人間関係をスムーズにできるコミュニケーション能力が必要です。外国の医者は、医療以外の知識も豊富で、日本文化についてもよく聞かれました。自分の経験で言うと、日本人として日本のことを説明できるようにならなければと思いました。一般教養や会話力は必要です。難しい決断をする時に、「Yes」,「No」を言えて、その理由を論理的に説明できる力も必要です。
国境なき医師団の医者になるなら、とにかく早く一人前の医者になることです。非医療スタッフを目指すなら、これはだれにも負けないという、何かのプロになることです。たとえば、国際情勢を勉強し、中東の地域有力者とでさえ交渉できる力を身に着けておくなど、プロにならない限り、他の知識も入ってきません。
<医者を目指す学生に、何かメッセージをお願いします。>
受験生の中には、○○大学の医学科とこだわる人もいると思うが、国境なき医師団の場合は、どの大学でもいいから入って、早く医者になった方がいい。グローバル化しているので、医師の資格さえあれば、あとは希望の大学で研究や研鑽ができる。成績が優秀だからとか、先生が勧めるから医学部に進学する傾向の人もいるが、医者になるという強い思いがないと、本来の目的を見失い、将来道徳的に正しくない道をたどることになりかねない。人間の価値観、倫理観、教養、常識を持ち、具体的にこんな医者になりたいという目標を持って医者になってほしい。
医者になるという強いもモチべーションを持っている方に医学部に入学してほしいし、それがあると思われる方に、進学を勧めてほしい。