シリアで起こったこと
2010年中東に広がった民主化運動「アラブの春」その波及でシリアに紛争が起こって1年半。欧米、日本、ロシア、中国などの主要国の利害が対立する紛争に国際社会も有効な手立てがないまま、民間人を含むたくさんの犠牲者がでるという異常事態が起きています
そんなシリアのアレッポという町で先日、日本人ジャーナリストの山本美香さんが、銃撃戦に巻き込まれて命を落としました
情報戦のウソで塗られた戦場。そこで何が起きているか報道することで社会を変えていけると信じて、20年もの間、世界の紛争地を巡り女性や子供たちなど弱い立場の人たちの側に立って真実を伝えてきました
戦場取材を始めて間もないころ、山本さんは自分のしていることにどれほど意味があるのか、自信が持てず悩んでいたそうです。その頃、訪れたアフガニスタンの避難民キャンプで、幼い息子を亡くした父親を取材した時
「こんな遠くまで来てくれてありがとう。世界中のだれも私たちのことなど知らないと思っていた。忘れられていると思っていた」
と涙を流す姿を見て、自分がこの場所に来たことにも意味はある、この目撃した出来事を世界中の人たちに知らせなければ、やらなくちゃいけないことは山ほどある、とジャーナリストという仕事に全力を注いでいく覚悟をしたそうです
山本さんは現地取材だけではなく、日本滞在中は若い人たちに向けても報道の使命感を講演していました。十代に向けての著書もあります
ぼくの村は戦場だった。 (マガジンハウス)
『戦場では絶えず銃弾の雨が降っているわけではない。信じられないほど激しかった戦闘がぱたりと止み、静寂があたりを包むこともある。その隙を見逃さず、田畑を耕し、食事を作り、家族を養うたくましい人々の姿がある。どのような状況でも人間は生きていくのだ』(本文より)
アフガニスタンやイラク、コソボなどを訪れ、大きな力の側でなく、弱く不利な立場で攻撃される側の現状を伝えています
戦争を取材する~子どもたちは何を体験したのか (講談社)
どうして同じ人間が憎み合ったり殺し合ったりするのか、なぜ戦争がおこってしまうのか、平和のためにはどうしたらよいのか、話し合うきっかけになる一冊
ジュニアアエラ9月号には「キミは人に銃を向けられるか?」という記事も寄稿しています