八十八夜
立春から数えて八十八日目。今日は八十八夜です。春から夏へ切り替わる時。校内でも昨日から、合服への移行期間となりました。
夏も近づく・・・、と言っても「八十八夜の別れ霜」という言葉もあり、地域によっては急に気温が下がって遅霜が降り、芽吹きはじめた農作物に被害を与えることもあるそうです。それを警戒した言葉で、別れ霜は季語にもなっています。
そして、八十八夜がすぎれば気候も安定してくることから、農家では昔から八十八夜は作業の目安とされてきたそうです。
七夕、小正月などの昔からの行事に郷愁をもっていたと言われる太宰治の小説に「八十八夜」という短編があります。
作家の笠井さんは、一時はハイカラな作風で新鋭作家として脚光をあびましたが、今は家族や生活のためと努力して、芸術を捨てて生活の為だけに通俗な小説を書く日々。なのに生活は楽になるどころか、気持ちの上でもどんどん落ち込む一方。もう八方ふさがり、闇の中。
根も尽きた五月のある日、ありったけのお金を持って旅に出ます。顔見知りの女中さんがいる駒ヶ岳の麓・上諏訪の宿へ。ロマンチックと自由を求め。
数ページの短編小説です。笠井さんの心の動きが、ごく短文で書かれています。
2日間の旅で、自分自身にとことん嫌気がさして、叫びだしたいほど自己嫌悪に陥るのに、そんな自分に平気になれ、と、いつしか救いを見出します。
太宰治全集3(筑摩書房) 走れメロス(角川書店)等で読むことができます。