« 百人一首デビュー | メイン | 赤毛のアンのこと おまけ »

もっと、赤毛のアンのこと

 前回、村岡花子さんの訳した『赤毛のアン』を紹介しましたが、他にも色々な人が翻訳を手がけています。
 なかでも、シェイクスピアとモンゴメリの結びつきに着目したのが松本侑子さん。現在、赤毛のアン、アンの青春、アンの愛情/モンゴメリ著 松本侑子訳 (集英社)の3冊が出版されています。

        ann05.jpg

 子どもの頃から「赤毛のアン」を読み込んでいた松本さん。翻訳を依頼されて原著を読んだ時、アンの話す言葉の中に、いかにも昔風の言葉づかいで芝居がかったセリフが出てくるのを不思議に思いました。もともと欧米の小説には、有名な詩の一節やよく知られたお芝居のセリフが引用されることがよくあるのだそうです。
 
 でも、原著には「これは〇〇の詩の一節です」とか「このセリフはシェイクスピア劇からの引用です」などという注釈がありません。(現在、小説の中で他の作品の文章や歌などを使った場合、引用文献として元の作品情報が記述されます)

 そこで松本さんは原著を読み込み、それと思われる文章をピックアップ、ひとつひとつ解き明かしていきます。まだ現在ほどインターネットが便利なツールとして存在していなかった時代、気の遠くなるような作業は10年かかりました。そして翻訳が完成した時、解き明かした謎は訳者ノートとして巻末に加えられました。

 「ロミオとジュリエット」「不思議の国のアリス」や「マザーグース」など、引用される英米古典の注釈をすべて収録。そしてこれまではどちらかというと児童文学として翻訳、紹介されてきたアンのシリーズを、原文のヴィクトリア朝の文体をいかし大人にも楽しんでもらえる小説にすることで、その魅力を伝えたかったそうです。

 赤毛のアンに隠されたシェイクスピア/松本侑子(集英社)では、解き明かした謎をもっと詳しくまとめてあります。

 原著「Anne of Green Gables 」に挑戦してみたいという人は、図書室に所蔵していますし、外国の青空文庫(著作権の切れた作品などをインターネット上で全文読むことが出来るサイト)的な Project Gutenberg などで無料で読むこともできます。