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12月の図書だよりから ②

歴史の分野から
210 梅干と日本刀、 続・梅干と日本刀/樋口清之(祥伝社)
 考古学の研究者であった樋口清之さんが、日本の良さ、日本人の特徴、日本人の気質について語ったもので、最初に出版されたのは40年ほど前。近年、この2冊が新書として復刊されました。

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 日本古来の「衣・食・住」における様々な習慣などの具体例をあげ独自の解釈を展開。それらの習慣は現在も受け継がれているもの。災害も多く高温多湿といった日本独特の自然や風土を逆に利用、工夫して培ってきた、その科学性、独創性、柔軟性、計画性などをわかりやく解説しています。

 例えば、日本人は「一人(個人)で生きている」ではなく、「共同体の中で生きている」という思想がある。それは稲作文化によってうまれたもの。
 面白い大阪商法として紹介してあるのは、欲しい鞄があって買いに行ったけれど行った店になかった。店主は「ウチにはおまへんけど、多分あの店にありますわ」といって他店を紹介した。
 これは、買い手の立場に立った視点、同業者同士の連携、自分の店だけを考えたエゴイズムでなく、もっと大きな視野にたった共同体的商法だというわけです。

 例えば、現在、科学的に食事が観察され、どれだけのカロリー、塩分が必要で、どの食品にどれだけの栄養がある、という見方がされています。でも本当に必要な知識は、食品のもともとの栄養ではなく、お腹に入ってどれだけの栄養が肉体の糧になるのかということ。
 ごぼうやこんにゃくは栄養がほとんどないけれど、体内のコレステロールを吐き出してくれる作用がある。梅干は食べたご飯の酸性を中和しほとんどのカロリーを吸収できるようになる。それらの食習慣は、日本古来からのものです。

 日本は昔から、人もモノも文化も、新しいものを受け入れては試してみる精神がありました。自由な企画発想、それを日々実行するうちに一種独特で多層的な文化ができてきました。
 近年、日本の伝統のすばらしさは、「COOL JAPAN」として世界からその存在を認められ注目されています。それが如何に世界に誇れるものか、すでにこの本を書いた40年前から樋口さんは伝えています。