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2015年01月29日

香月日輪さんの事

 図書室でも人気の作家・香月日輪(こうづきひのわ)さんが、昨年12月19日にご病気で亡くなられました。
 新学期が始まって、香月さんを大好きな中3生が教えてくれるまで私も知りませんでした。連載途中の作品もあり、たくさんのファンがいるのでとても残念です。
 「違う世界や、違う価値観があってこそ、世の中はおもしろい」と語る香月さんは、作品の多くに妖怪や物の怪など異世界のキャラクターを登場させることでも人気でした。

妖怪アパートの幽雅な日常 全10巻+4(講談社)
 幼い頃に両親を事故で亡くした夕士は早く独り立ちするのが夢。高校入学を期に親戚の家を出て下宿生活を始めます。引っ越し先のアパートには、ちょっと変わった、でも人情味あふれる《住人たち》が暮らしていました・・・。

僕とおじいちゃんと魔法の塔 1~6 (角川書店)
 6年生の龍神(たつみ)は、両親、弟妹から何か疎外感を感じながら暮らしている。そんな龍神が町外れの岬に立つ塔で出会ったのは、龍神が生まれる前に死んだはずのおじいちゃんだった。
 秘密を抱えたその塔で、ちょっとへんてこなおじいちゃんと過ごすうちに、なんだか居心地悪く感じていたこれまでの龍神の人生が少しづつ変わっていく・・・。

 どちらも、この世のものでない者と関わり、助けられ、主人公が成長(年齢も)していく物語です。
また、香月流!幽雅な相談室~妖アパから人生まで(講談社) では、「まず自分の足下(世界)を固めよう」「身近な人でも、ネット上ででも人との距離感はとても重要」「〈大人になる〉のではなく、〈大人な態度〉が取れるのが大事」 など読者の質問に答える様子は、香月さんの人となりや作品に対する気持ちがうかがえます。

 他にも、大江戸妖怪かわら版、地獄堂霊界通信、ファンム・アレース (講談社)、下町不思議町物語、黒沼 (新潮社) 桜太と不思議な森(徳間書店) などたくさんの作品があります。

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香月さんのコーナーを作りました。もう一度読み直してみませんか?ファンの人達からのコメントも募集中。

2015年01月24日

後藤健二さんの事

 数日前、「イスラム国」によって二人の日本人の方が拘束され、以降緊迫した状況が続いているのは、ニュースで取り上げられているので知っていますよね。
 その一人がジャーナリストの後藤健二さん。本も出版されていて、図書室でも2冊の蔵書がありました。
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 ルワンダの祈り/後藤健二(汐文社)
今から20年前、アフリカ中部の国・ルワンダで起こった内戦は、民族が違うというだけで昨日まで仲良くしていた隣人同士が争いあうという想像を絶する悲惨な戦いでした。絶望と悲しみしかない中、家族がバラバラになってもお互いを信じて、内戦を生き延びた一家を追った物語です。

 北欧・エストニア、ロシアとの国境にある住民の90%がエイズウィルス(HIV)感染者と言われる町を取材した エイズの村に生まれて/後藤健二(汐文社)
 完治させる薬はないけれど感染原因もその予防法もわかっているエイズは、他の伝染病に比べてふせぐ事のできる病気です。でも、日本を含め現在もその発症を止めることが出来ない。
 後藤さんが町で出会ったのは、出産間もない16歳のナターシャと彼女の娘です。ナターシャは、この国でエイズウィルスに感染しながらも子どもを産んだ初めてのケース。まだ、検査は出来ませんが、十分、母子感染が疑われます。これから乗り越えていかなければならないものがたくさんある二人、そしてこの町で感じた絶望感と孤独感を忘れることができないそうです。

 現在、ルワンダは内戦を終え新政権が樹立し新しい国として生まれ変わっています。エストニアでも、エイズに対する取り組みが進み、感染者も減って来たそうです。

 報道で紹介されているように、後藤さんは戦争や難民に関わる問題や苦しみのなかで暮らす子どもたち、弱い立場の人達にカメラを向け、世界各地を取材しています。そして、感じたこと体験してきたことを、帰国後、各地の小中高校などで若い世代に向けて発信もしています。
 すごく遠く離れているように感じるけれど、世界は案外、狭い。遠くのどこかの国の話ではないことを知ってほしいと活動されています。 無事に解放されることを願います。

2015年01月22日

20年になります

 先週末17日、阪神・淡路大震災から20年を迎えました。
朝日新聞によると、関西学院大学・人間福祉学部と共に行った調査では、多くの人達が亡くした家族を今もなお「どうしようもないほど恋しく、いとおしい」と感じ、今もどこかで生きていると考えることがある、と。これからは、記憶を伝え続けることが一層大事になるそうです。
 
 企業買収などをテーマにした小説「ハゲタカ」シリーズなどで人気の作家・真山仁さんは関西出身。20年前に大震災を経験しています。そんな真山さんのこれまでとはちょっと違った被災地の小学校を舞台にした作品。

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そして、星の輝く夜がくる/真山仁 (講談社
 東日本大震災により大きな被害を受けた被災地の小学校に、震災2か月後、応援教師として神戸から赴任した小野寺徹平先生。彼自身も20年の教師生活の中で、阪神淡路大震災を経験しています。
 赴任先では人も街もみんな早く「普通」を取り戻そうと無理しているように、小野寺先生には見えます。そこで、余震になれ、周囲から励まされ続ける子ども達に伝えたのが「地震になれるな」と「がんばるな!」という言葉。そして自己紹介を兼ねた作文を書かせます。テーマは「やってられへんわ!」
 作文を読み、思った以上に子ども達が心の奥に具体的な怒りを持っていると感じた先生は『わがんね新聞』の発行を提案します。「わがんね」というのは東北弁で「やってられへんわ!」という意味。
 毎日やってられへんと感じる怒りだけを書こうと言うのです。「子どもは我慢しすぎたらあかん、大人に気をつかってお利口さんにならんでいい」という先生の言葉に賛否両論の中、新聞1号が発行されます。

 他にも、原子力発電所に勤める父親を持つ転校生、学校から避難中に教え子を失くした先生、ボランティアと地元の人々の関係など、小野寺先生が過ごした1年間、混乱から希望へと向かう街と人々を描いた短編連作集です。
 

2015年01月15日

ひつじ年にちなんで ②

 もう一つ、「羊」のついた作品の。 こちらは『電気羊』 SF小説です。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか?/フィリップ・K・ディック (早川書房)
 舞台は、最終世界大戦後のアメリカ。放射能灰に汚された地球では多くの動物たちが絶滅、人々の多くも他の惑星に脱出。過酷で危険な仕事はアンドロイドが行っている世界。
 そんな中、地球に残り人工的な物に囲まれて生きる人々にとって、希少価値のある本物の動物を飼うことこそステータスシンボル。全財産をはたいてでも手に入れることが夢であり、生きがいなのです。経済力がなく電気羊(機械動物)しか飼えない主人公のリックも、その一人。
 ある時、火星からアンドロイドが脱走する事件が起きます。逃亡中の8人のアンドロイドにかかった莫大な懸賞金を手にするため、賞金かせぎのリックは決死の覚悟で彼らを追います。
 しかし、彼ら(特に1人の女性アンドロイド)と関わるうちに「人間とアンドロイドとの違い」という根本的な部分で迷いが生じます。外見だけでは判断できない両者の違いは、感情移入の有無だけなのか?(両者の鑑別には感情移入検査というテストが行われる) 機械やバーチャルに感情をコントロールさせて生きる自分達は本当に人間といえるのか?

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 1968年に発表されたこの作品を原作に、映画『ブレード・ランナー』(監督・リドリー・スコット、1982年)が作られ、一躍脚光をあびました。映画もおもしろいですよ。

 訳者のあとがきには、作者のディックは感情移入を人間の最も大切な才能と考えた、とあります。「どんな姿であろうと、どこの星で生まれようと、問題じゃない。問題はあなたが、どれほど親切であるか、だ。」とコメントしているそうです。
 彼にとってアンドロイドと人間の自然科学上、生物学上の違いには無意味。『親切であればすべて本物』だと言います。そこだけ取り上げるとちょっと極端な言い方ですが、『人間らしさというのは他者に共感して行動ができること』 というような意味でしょうか。そんなディックが「人間とは何か?」をテーマに取り組んだ、長編SF作品です。
 

2015年01月13日

ひつじ年にちなんで

 羊は世界各地の食生活において最も受け入れられているテ―ブルミートといえるそうです。日本では家庭の食卓に上がることはあまりないと思いますが、宗教上、牛肉や豚肉は口にできない事はあっても、羊肉をタブーとしている国や宗教はないからです。
 あ、今年の干支に対して食べてしまう話は、なんですので・・・こんな情報も。

 羊は紀元前より人類にとって最も身近な動物のひとつで、東洋でも西洋でも、神への最適な捧げものとして考えられてきました。やがて「羊」は「よきもの」の意を備え、「美」「善」「祥」といった良い意味の漢字に羊の字が使われるようになります。
 羊に対する吉祥イメージはアジア全域に広がり、正倉院宝物にも羊文を表わした白綾や羊を描いた臈纈屏風(ろうけちびょうぶ)が存在しています。
 ただ羊の生息しなかった日本では、羊自体を吉十二支のひとつや異国の動物として認識、明治時代に実物が広く持ち込まれるまで、半ば想像上の動物に近い存在とされていたようです。        (東京国立博物館HP ひつじと吉兆 より)

 初めて毛むくじゃらの羊を目にした当時の人達は、びっくりしたでしょうね。
では、ひつじ年ですから、こちらの本を紹介。

 羊をめぐる冒険 /村上春樹 (講談社) 
 主人公「僕」のもとへ、忽然と姿を消した古い友人「鼠」からある日手紙が届きます。そこには牧場で草をはむ羊の群れの写真と、「この写真をできるだけたくさんの人の目に触れるようにして欲しい」という手紙が同封されています。
 「僕」が手掛けていた雑誌にその写真を掲載したところ、接触してきたある組織。写真に映りこんでいる背中に星型の模様をつけた特殊な羊を探し出すよう、半ば脅すように依頼される「僕」。
 その組織の権力者と重要な関わりのある1匹の羊を探すために、「鼠」からの手紙を手掛かりに北海道へ向かう「僕」。それは羊だけでなく、古い友人「鼠」をめぐる旅の始まりでもあったのです。

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 「僕」が札幌のいるかホテルで出会った「羊男」を主人公にした羊男とクリスマス/村上春樹(講談社)は、聖羊祭日(クリスマス・イブ)に穴のあいたもの(ドーナツ)を食べたばっかりに、呪われてしまった!羊男の災難を描いた物語。

2015年01月06日

新しい1年

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    新しい1年が始まりました。今日から図書室も開室です。

 今年もみなさんが「自分の頭で考える」ための手助けの場であり、本の話がたっぷりできる場でありたいと思っています。
 今年もよろしくお願いします。

 * 先月からスタンプラリー読書週間杯のプレゼントの引き渡しを始めています。
   まだ受け取りに来ていない人は、いつでもどうぞ。