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2月の図書だよりから ③

 小学6年生の男の子3人組と近所に住む1人暮らしのおじいさんとの奇妙な交流を通して、彼らにとって『死』とは何かを考え描いた夏の庭(新潮社) で知られる湯本さんの短編集。

夜の木の下で/湯本香樹実 (新潮社)

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 交通事故にあい意識のないまま入院している弟。ケースワーカーに言われるまま臓器提供の意思カードを探しに弟のアパートを訪ねる姉。それぞれの独り語りで物語は進みます。
 弟の整頓された部屋でまどろみながら、最後に会った時にかけておけばよかった言葉を思い後悔し、出来るなら今からでも2人の運命を入れ替えたい、と強く思う姉。

 最後にあったときって、あの焼肉屋でしょう?弟はそう思いながら『あいだのとこ』から姉の様子を眺めている。『あいだのとこ』としか言いようのない「そこ」は、ずっと留まることが出来ない場所だって、ゆらゆらする意識の中なんとなくわかっている弟。
 そんな姉弟の意識を結びつけたのは、2人が子どもの頃にかかわった捨て猫。弟はそのキジ猫の事を思い、まどろむ中で姉はそのキジ猫に出会う。言葉を交わし、何かにひきつけられ、何かをつかもうと暗闇に手を伸ばす。姉がつかんだものはなんだったのでしょう。(夜の木の下で)

 理由が分からずいじめられるのはイヤだから、自分から正々堂々1対1の決闘を申し込む。それで負けるのは構わない、自分の意志で決めたことだから。
 いじめる側にいた俺が、その決闘を境にあいつの隣にいるようになった。そして、あいつが一番恐れていたのは、いじめっ子なんかじゃないことに気づいた時に・・・(リターン・マッチ)
 
 現在と過去、生と死、現実と幻想が自分の中で隣同士にある主人公たちを描いた6つの物語です。