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2016年02月27日

びっくりぽんや!

 物語は終盤を迎えていますが、大阪が舞台のNHK朝の連続ドラマ『朝が来た』が現在放映中です。日本経済の大きな変動期であった幕末から大正を生きた、実在の女性実業家・広岡浅子さんをモデルにその生涯を描いたドラマです。 

 原作となったのが、小説 土佐堀川/古川智映子(潮出版)

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 小さい頃から商いの才覚に長けた子どもだと言われ育った浅子さんは、17歳で大阪の豪商・加島屋に嫁ぎます。
 父親がわりでもあった三井銀行を設立した義兄を商売の師と仰ぎ、まだ女性が社会の表舞台に出ることのなかったこの時代に、炭坑事業、銀行や生命保険会社(大同生命)を設立、時代に先駆けて敏腕を振るいました。

 自身で作った言葉「九転び十起き」(七転び八起きより2回も多い)が座右の銘。人の何倍も努力をして、転んでもただでは起きず、何かをつかんでまた起き上がる。力強く負けん気の強い浅子さんらしい言葉です。
 
 晩年は社会事業や女子の高等教育の普及にも力を入れ、日本で最初の女子大学(日本女子大学)設立に尽力しました。その生き方には、後に婦人運動家として活躍した政治家・市川房江さんも影響を受けています。

 又、関西学院大学や大阪・大丸心斎橋店を始め、当時多くの西洋建築を手がけた米国人建築家 ・ウィリアム・メレル・ヴォーリズは、浅子の娘婿と義兄弟で、設立時の大同生命ビルや芦屋の自宅など設計したのだそうです。

2016年02月23日

マエストロ・小澤

 先日、アメリカの音楽界で最も権威があるとされるグラミー賞のオペラ録音部門で、世界的に活躍する指揮者・小澤征爾さんの指揮、サイトウ・キネン・オーケストラによる『ラヴェル:歌劇《こどもと魔法』が最優秀オペラ・レコーディング賞を受賞しました。

 サイトウ・キネンオーケストラは音楽家・齋藤秀雄さんから指導を受けたメンバーによって設立。小澤さんを始め、その多くの演奏家が齋藤スピリットを受け継ぎ、齋藤さんを直接知らない若い世代へも伝え、進化しているオーケストラです。

 そんな小澤さんとオーケストラのヨーロッパツアーに密着した
小澤征爾 サイトウキネンオーケストラ欧州を行く/一志治夫(小学館) 
 ツアーのリハーサルや本番の様子をたくさんの写真と共に追いかけます。
 公演のチケットは即日完売が当たり前ななか、なぜかミラノだけが3割しか売れていない。それを聞いた小澤さんは事実を団員たちに伝え「来なかった人が悔しいと思うような演奏をしましょう」と奮い立たせます。
 来たお客さんに絶対いい思いをさせる、そんな想いが全員の心に湧きあがります。そして、結果は・・・。臨場感あふれる1冊。

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小澤征爾さんと、音楽について話をする/村上春樹✕小澤征爾(新潮社)
 音楽好きで知られる作家の村上春樹さんと小澤さんの対談集(というか村上→小澤のインタビュー集)。
 ある時、2人で話した音楽談義があまりにも面白く「こんな興味深い話がここで消えてしまうのは惜しい、文章として残すべきだ!」と村上さん自ら行動を起こします。これまでの小澤さんと音楽の関わりをたっぷり聞き出しました。

2016年02月20日

本屋大賞ノミネート作品は?

 書籍、雑誌とも年々縮小傾向にある出版市場ですが、出版点数だけは年間7万冊と年々増え続けています。そんな膨大な新刊書籍の中で、いったいどの本を読んだらいいの?
 そう迷える人達に対して、商品である本と顧客である読者を最も知る立場の書店員さんが、本当にお奨めしたい本の情報を啓発する手段として作ったのが本屋大賞。年々、その影響力は大きくなっているようです。

 今年も本屋大賞のノミネート10品が決定しました。大賞に選ばれるのは、どの作品でしょうか?
コーナーをチェックしてみてください。全作品を所蔵していますが、貸出中、予約待ちの本もあります。

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2016年02月16日

ゴリラの森から、大学へ

 前回、紹介したゴリラ博士・山極寿一さんは、2014年10月から京都大学の総長に就任されています。その時掲げたキャッチフレーズが「おもろいことをやりましょう!」です。

 京大式おもろい勉強法/山極寿一(朝日新聞出版)
 自身の京都大学での学生時代や、アフリカでのフィールドワーク時代の経験を挙げながらの、若い人たちにむけた「野性的発想術」です。

 例えば、ジャングルは陸上における生物多様性が最も高い場所。それぞれが適合する場所や役割を構えて共存しながら一つの生態系を築いています。
 そういう意味では、いろんな分野の研究者がいて社会での多様性が高いと言える大学も又ジャングル。
 そんな場所で大事なのが、多様なものの存在を認めつつ、それを自分にうまく合わせつつ、なおかつ自分を失わずにいること。山極さんは、それこそグローバルな人間だといいます。
 今の京大でも、自分の意見はいえても人の意見が聞けない、自分と違う意見が出ると「その意見には賛成できません!」といって殻に閉じこもってしまう、つまり対話ができない学生が多いと言います。

 グローバルと言えば、まずは語学力と思うかもしれないけれど、アイデンティティをしっかり持つことが重要。いろんな人と出会い、相手の立場に立って物事を考え、自分の身にまとっている教養を表現でき、状況に応じて意思決定をして、自己主張が出来る。(む、むずかしい。)
 それに欠かせないのが対話。対話力の大切さを語られています(山極さんの学生時代はディスカッションすることが多く、そのおかげで身についたそうですよ)

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 以前、教職員対象の講演会で講師として来ていただいた時に著書にいただいたサイン。ゴリラのイラスト付き。